マンラーイ

マンラーイ王：ラーンナー王朝の創始者

マンラーイ王は、ラーンナー王朝の創始者として知られ、タイ北部地域におけるタイ族の勢力拡大に大きく貢献しました。もともとピン川地域のタイ族首長であった彼は、周辺地域からクメール人やモン族の勢力を排除し、現在のタイ北部地方の基礎を築きました。彼の生涯は、領土拡大と文化的な発展の歴史であり、その影響は現代のタイ北部にも深く根付いています。

生い立ち

1238年10月2日、マンラーイはヒランナコーングンヤーン（現在のチェンセーン）で、君主パヤー・ラーオメンとチエンルン出身のナーンテープ・カムカーイの間に生まれました。彼はラーオチョン王家（チャッカラート王家）の25代目の君主とされ、即位の際にはラーオチョンの正当な後継者であることを宣言し、王家の神器を相続しました。

領土拡大

即位後、マンラーイはすぐに領土拡大に着手しました。周辺のムアン（都市国家）に同盟を呼びかけ、応じた国には王の統治を認め、拒否した国は武力で併合し、自らの親族や家臣を派遣して統治させました。この戦略によって、ヨーン地域を次々と支配下に置きました。

ラーンナー王朝の創設

1259年、モンゴル帝国の勢力が雲南地方にまで及ぶ中、マンラーイは首都をヒランナコーングンヤーンから南へ遷都することを決定し、1262年に新首都チエンラーイを建設しました。1276年にはパヤオを攻撃しますが、途中で攻撃を中止し、パヤオのガムムアン王と友好関係を築き、強固な同盟を結びました。

ハリプンチャイの攻略

マンラーイは、チャオプラヤー川の支流であるピン川沿いの都市国家ハリプンチャイのモン族商人から、中国との貿易において内陸部よりもチャオプラヤー川を利用した方が効率的であるという情報を得ました。その結果、ハリプンチャイの領有を画策し始めました。

1287年までに軍備を増強し、ハリプンチャイの都市ファーンを要塞化し、パヤオのガムムアンやスコータイのラームカムヘーンと同盟を結んで、南と東からの安全を確保しました。その後、スパイのアイ・ファーをハリプンチャイに送り込み監視させ、1292年にアイ・ファーの合図と共にハリプンチャイへ侵攻し、これを陥落させました。

新都チエンマイの建設

ハリプンチャイを征服後、マンラーイは2年間その地を統治しましたが、アイ・ファーに統治を任せて放棄しました。その後、ウィエンクムカームに一時的に首都を建設しようとしましたが、ドーイ・ステープ付近に都市建設に適した土地を見つけ、そこへ移転しました。これが現在のチエンマイです。

晩年と遺産

晩年のマンラーイは、内政の強化に尽力しました。ハリプンチャイの影響を受けた混交文化が花開き、マンラーイは内政を安定させるため、モン族の法典を参考にして基本法典を整備しました。これがマンラーイ法典として、後のタイにおける近代的な法典整備まで、法典の権威となりました。また、仏教もモン族的な上座部仏教が主流となりました。

晩年においてもマンラーイは戦争から離れることなく、モンゴル帝国の南下に対抗しました。1299年にはモンゴルの傀儡となったパガンの王に攻撃されていたシャン族の地域へ軍を派遣し、モンゴル勢力を牽制しました。1301年にはモンゴルがチエンルンに侵攻したため、自らも軍を派遣しましたが、1311年に落雷により死去し、チエンルンはモンゴルの朝貢国となりました。マンラーイ王の功績は、タイ北部における政治、文化、法体系の基礎を築いたことにあります。

参考文献

Sarassawadee Ongsakul, Trans. Chitraporn Tanratanakul Ed. Dolina W Millar Sandy Baron "History of Lan Na" Silkworm Books, Thai Text 2001, English text 2005
Hans Pent "A Brief History of Lan Na" Silkworm Books, 2000
* The Chiang Mai Chronicle 2nd Edition, trans. David K. Wyatt and Aroonrut Wichienkeeo, Chinag Mai: Silkworm Books, 1998, ISBN 9747100622

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