チャップリンとパン屋

『チャップリンとパン屋』解説

『チャップリンとパン屋』（原題: Dough and Dynamite）は、1914年に公開されたチャールズ・チャップリン監督・主演の短編サイレント映画です。キーストン社製作で、チャップリンのフィルモグラフィーにおいては29作目に当たります。

あらすじ

舞台はパン屋兼食堂。そこで働く2人のウェイター、チャップリンとチェスター・コンクリンは、従業員たちのストライキに加わらず、仕事を続けます。しかし、チャップリンはコンクリンと絶えず衝突し、いい加減な仕事ぶりで店内は混乱に陥ります。店主も妻がウェイターと浮気していると誤解し、チャップリンに詰め寄り、事態は乱闘へと発展します。

一方、ストライキ中の職人たちは、購入したパンにダイナマイトを仕込み、少女に頼んで店に返品させます。そのパンは再びオーブンへ。そして、パンは大爆発を起こし、チャップリンやコンクリン、店主、ストライキ参加者たちを巻き込む大騒動となるのです。

制作背景と評価

当時のキーストン映画の製作費上限は1,000ドルでしたが、本作は1,800ドルと大幅に超過しました。そのため、マック・セネットからチャップリンに支払われていたボーナスも一時停止されました。しかし、作品は公開されると大ヒットし、1年目だけでキーストン社に莫大な利益をもたらしました。本作に登場する「ストライキを起こした連中がダイナマイトを仕掛ける」という設定は、後の『チャップリンの舞台裏』にも転用されています。

また、ラストのダイナマイト入りパン爆発シーンは、「チャップリンのお仕事」で、浮気をした妻と浮気相手に怒った主人が銃を乱射、流れ弾がストーブに当たり爆発、家が倒壊するというギャグとして再現されました。

チャーリーの人物像

チャップリンの代表的なキャラクター「チャーリー」は、しばしば「弱者」の象徴として捉えられますが、本作においては、ストライキを起こした職人たちに肩入れすることはありません。映画研究家のジュリアン・スミスは、「チャーリー」は階級意識に基づいて主体的に行動するのではなく、あくまでハプニングに巻き込まれることで観客に「弱者」の印象を与えていると分析しています。

キャスト

チャールズ・チャップリン - ウェイター
チェスター・コンクリン - ウェイター
フリッツ・シェイド - パン屋の主
ノーマ・ニコルズ - 主の妻
セシル・アーノルド - ウェイトレス
ヴィヴィアン・エドワーズ - ウェイトレス
フィリス・アレン - 客
ジャック・ディロン - 客
エドガー・ケネディ - ストライキをするパン屋の職人
スリム・サマーヴィル - ストライキをするパン屋の職人
チャーリー・チェイス - ストライキをするパン屋の職人
ウォレス・マクドナルド - ストライキをするパン屋の職人

日本語吹替版

チャップリンのデビュー100周年を記念して、2014年にはスター・チャンネルで日本語吹替版が製作・放送されました。

参考文献

チャールズ・チャップリン『チャップリン自伝』中野好夫 訳、新潮社、1966年
デイヴィッド・ロビンソン『チャップリン』 上、宮本高晴、高田恵子 訳、文藝春秋、1993年
大野裕之『チャップリン再入門』日本放送出版協会、2005年
大野裕之『チャップリン・未公開NGフィルムの全貌』日本放送出版協会、2007年

外部リンク

Dough and Dynamite - IMDb (英語)
Dough And Dynamite - Internet Archive (BGM有り)
* Dough and Dynamite - YouTube (BGM有り)

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