チャムリー侯爵

チャムリー侯爵家：イギリス貴族の歴史と系譜

チャムリー侯爵（Marquess of Cholmondeley）は、イギリスの由緒ある侯爵位であり、連合王国貴族に属します。その爵位名は、しばしば「チャムレー」や「チャモレー」と表記されることもありますが、「コルモンデリー」や「チャーモンドレー」といった表記は誤りです。

この家系の歴史は古く、ノルマン・コンクエストの時代からチェシャー州チャムリーの地を領してきた旧家です。16世紀には、ヒュー・チャムリーがスコットランドとの戦争において100人の兵士を私費で募った功績により、イングランド王ヘンリー8世よりナイトに叙されています。彼はチェシャー州長官なども務めた人物でした。

チャムリー家の爵位の歴史は、17世紀にさかのぼります。サー・ヒューの息子、ロバートは1628年にアイルランド貴族のチャムリー子爵に叙され、さらに1646年にはリンスター伯爵となりました。しかし、生涯独身だったため、これらの爵位は彼一代で途絶えました。一方、弟ヒューの子孫が、チャムリー侯爵家の祖となります。

チャムリー家の重要な転換期は、ヒューの甥にあたるロバートが1661年にアイルランド貴族のチャムリー子爵（第2期）に叙されたことに始まります。その後、彼の息子であるヒューが1689年にはイングランド貴族のチャムリー男爵に、1706年にはチャムリー伯爵に叙せられます。彼はウィリアム3世とメアリー2世の即位を支持し、名誉革命後も重要な役割を担いました。様々な宮廷の要職を務め、チェシャー州統監にも就任しています。

初代チャムリー伯爵ヒューは生涯独身でしたが、爵位継承に関する特別な規定により、弟のジョージが2代目を継承しました。2代チャムリー伯爵ジョージは優れた軍人として知られ、ボイン川の戦い、ステーンケルケの戦いなどに参加し、陸軍大将まで昇進しました。彼はアイルランド、グレートブリテン両国の貴族にも叙せられ、兄からチャムリー伯爵位を相続しました。

3代チャムリー伯爵ジョージは、ホイッグ党の政治家として活躍し、首相サー・ロバート・ウォルポールの娘と結婚しました。彼の息子ジョージが早世したため、孫のジョージが4代伯爵となり、1815年にロックサヴェイジ伯爵およびチャムリー侯爵に叙せられます。これは、チャムリー家の歴史における重要な転換点となりました。

その後、チャムリー侯爵家は代々爵位を継承していきます。2代チャムリー侯爵ジョージは式部卿を世襲することになり、この伝統は現代まで続いています。3代以降のチャムリー侯爵も、政治家として活躍したり、重要な役割を担ったりするなど、イギリス社会に貢献し続けてきました。

1999年の貴族院法により、世襲貴族が自動的に貴族院の議席を持つことはなくなりましたが、式部卿を世襲するチャムリー侯爵と、紋章院総裁を世襲するノーフォーク公は例外として、議席を保持し続けています。現当主である第7代チャムリー侯爵デイヴィッド・チャムリーも、現在貴族院議員を務めています。

チャムリー侯爵家は、長い歴史の中で様々な爵位を積み重ね、イギリス貴族社会において重要な位置を占めてきました。その歴史は、イギリスの歴史そのものとも深く関わっており、今後もその伝統を継承していくことでしょう。彼らの邸宅は、ノーフォーク州ホートンのホートン・ホールと、チェシャー州チャムリーのチャムリー城です。

チャムリー侯爵家の系譜は、複雑で魅力的なものです。アイルランド貴族やイングランド貴族の様々な爵位が、婚姻や叙爵を通して複雑に絡み合い、今日のチャムリー侯爵家の地位を築き上げてきました。この家系の歴史を紐解いていくことは、イギリス貴族社会の歴史を知る上で貴重な機会となるでしょう。

現当主の保有爵位

第7代チャムリー侯爵デイヴィッド・チャムリーは、以下の爵位を有しています。

第7代チャムリー侯爵 (連合王国)
第10代チャムリー伯爵 (イングランド)
第7代ロックサヴェイジ伯爵 (連合王国)
第11代ケルズのチャムリー子爵 (アイルランド)
第10代マルパス子爵 (イングランド)
第10代チェスター州ナンツウィッチのチャムリー男爵 (イングランド)
第9代ウェックスフォード県ニューボロのニューボロ男爵 (アイルランド)
第9代アングルシー島のニューバラ男爵 (グレートブリテン)

チャムリー侯爵家の歴史は、イギリスの歴史と深く結びついた、魅力的で複雑な物語です。その繁栄と変遷は、イギリス社会における貴族の役割と影響力を示す、貴重な事例となっています。

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