チャーリー1型原子力潜水艦

チャーリーI型原子力潜水艦

チャーリーI型原子力潜水艦（英語: Charlie I class submarine）は、ソビエト連邦海軍およびロシア海軍で使用されていた巡航ミサイル潜水艦の一群で、NATOコードネームとして知られています。ソ連海軍では670型潜水艦（ロシア語: Подводные лодки проекта 670）と呼ばれ、艦種としては潜水巡洋艦に分類されます。その特徴は、潜水状態において対艦ミサイルを発射できる能力を持つ点です。

背景と登場

1950年代から60年代にかけて、ソ連海軍は原子力潜水艦の開発を進め、様々な艦級を整備しました。しかし、当時のアメリカ海軍は航空母艦や原子力駆逐艦の性能を向上させており、ソ連の潜水艦はこうした艦隊に対抗する上で改善が求められる状況でした。特に、従来の対艦ミサイルは浮上状態での発射を必要とし、戦術的な弱点がありました。

そこで、ソ連海軍は新しい対艦ミサイルであるP-70型の設計に着手。1964年からチャーリーI型の建造が始まりました。この新型潜水艦は671型潜水艦の設計要素を取り入れた一方で、661型潜水艦の技術も活用しました。

設計の特徴

チャーリーI型は、涙滴型の船体形状が採用されており、前部と後部は複殻構造で作られ、中央部は単殻構造になっています。この設計により、艦内にP-70ミサイルの発射管を収容できるスペースを確保しています。しかし、排水量の制約から、軍に求められる深度や浮力には限界があり、最大潜航深度は300メートルとされています。

使用される材料と技術

使用される素材は多様で、船殻には高張力鋼を用い、セイルや上部構造には軽合金が使われています。これは潜水艦の耐食性を維持するための工夫です。また、従来型と比較して静粛性を高めるために、防振装置や吸音材が導入されています。

装備と性能

この潜水艦の主兵装であるP-70対艦ミサイルは、当初から水中発射が可能な巡航ミサイルでした。全体で最大8発を搭載でき、その射程は約70kmに制限されていますが、静粛性のおかげで奇襲攻撃に向いていました。ソナーとしては、短距離用途のMGK-100が搭載され、後に性能向上したモデルに換装されました。

また、自動化システムによる作戦運用の効率化が図られており、高度な管制処理が可能です。これにより、「半自動艦」と呼ばれることもありました。

運用実績

1965年から1972年までに11隻が建造され、初めての実戦配備は北方艦隊に行われ、地中海での作戦任務にも従事しました。運用を通じてアメリカ海軍は、本型の潜水艦の存在が持つ戦術的効果を深く理解することになります。1974年以降は太平洋艦隊へ移行し、最終的に全艦が太平洋艦隊に配属されました。

しかし、冷戦の終焉や技術的な陳腐化の影響で、1986年以降は順次退役を始め、1995年にはすべてが除籍されました。特筆すべきは、初艇のK-43がインド海軍にリースされ、「チャクラ」として運用された事例であり、これは原潜運用の技術や経験を蓄積する貴重な機会となりました。

現在、退役した艦の多くは解体され、その場面は冷戦時代の深い歴史を物語っています。

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