チャールズ・エイヴィソン

チャールズ・エイヴィソン（Charles Avison）は、18世紀イギリスで活動した重要な音楽家です。バロック末期から古典派初期にあたる1709年2月にニューカッスル・アポン・タインで生を受け、1770年5月に同じ地で生涯を閉じました。作曲家、オルガニストとして活動しただけでなく、イギリス初の音楽批評を発表した人物としても知られています。

生涯

エイヴィソンの幼少期に関する詳細は少ないものの、父リチャードと母アンはいずれも音楽家でした。1709年2月16日には、故郷のセント・ジョン教会で洗礼を受けています。若い頃にはロンドンへ赴き、当時著名だったイタリア出身の作曲家フランチェスコ・ジェミニアーニに師事し、音楽の研鑽を積みました。芸術家のパトロンであり、後に国会議員となるラルフ・ジェニソンとも早くから関係があったようです。

エイヴィソンは生涯を通じて故郷への愛着は強く、多くのオファーがあったとされるものの、ニューカッスルを離れることはありませんでした。1735年 10月13日には地元のセント・ジョン教会のオルガニストに就任し、間もなくセント・ニコラス大聖堂（現在のニューカッスル大聖堂）のオルガニストも兼任するようになります。これらの教会を拠点に、地域の音楽活動の中心人物として活躍しました。

私生活では、1737年 1月15日にキャサリン・レイノルズと結婚し、ジェーン、エドワード、チャールズの3子が生まれました。興味深いことに、息子たちであるエドワード（1747年生）とチャールズ（1751年生）は、後に父と同じくセント・ニコラス大聖堂のオルガニストを務めています。特にチャールズは、賛美歌集の出版も行いました。

音楽家としての活動に加え、エイヴィソンは地域の音楽組織でも指導的な役割を果たしました。1738年7月にはニューカッスル音楽協会の会長に選出され、地域の音楽振興にも貢献しました。また、同時代の音楽家ジョン・ガースと協力し、ダラムで予約制の演奏会シリーズを企画・開催しました。この演奏会は現在も地元の劇場で続いており、彼の遺した文化的足跡の一つと言えるでしょう。

1770年5月9日あるいは10日にニューカッスルで亡くなり、セント・アンドリュー教会に埋葬されました。彼の名は、後に詩人ロバート・ブラウニングの著作『その時代の重要なる幾人かとの討論』の中で、重要な人物の一人として言及されています。

作品と影響

音楽的には、師であるフランチェスコ・ジェミニアーニがロンドンで広めたイタリア様式の伝統を継承しました。彼の作品は、明快なメロディーと端正な形式感を特徴としています。特に彼の合奏協奏曲は高く評価されており、中でも『ドメニコ・スカルラッティのソナタに基づく12の合奏協奏曲』は最も有名な作品です。この作品では、古今の作曲家によるソナタを、ジェミニアーニの編曲技法を取り入れて管弦楽のための協奏曲へと大胆に作り変える手法が見られます。これは、既存の素材を再構築する18世紀の音楽実践の一例としても興味深いものです。

作曲活動に加え、エイヴィソンは音楽批評家としても先駆的な存在でした。彼の著書『音楽表現についてのエッセイ（An Essay on Musical Expression）』は、1752年に出版され、イギリスで最初に出版された音楽に関する本格的な批評書とされています。このエッセイの中で、彼は音楽の美的側面や表現力について論じ、当時の音楽界に大きな影響を与えました。例えば、当時のイングランドで最も尊敬されていた作曲家の一人であるゲオルク・フリードリヒ・ヘンデルに対しても、独自の視点から批評を展開しています。その内容は論争を巻き起こすこともありましたが、音楽を単なる娯楽としてではなく、深い表現芸術として捉えようとする彼の姿勢は、その後の音楽批評の発展に寄与しました。

チャールズ・エイヴィソンは、故郷ニューカッスルに根差しながら、作曲、演奏、批評といった多岐にわたる活動を通じて、18世紀イギリスの音楽文化に確かな足跡を残した人物です。彼の作品と著作は、当時のイギリスにおけるイタリア音楽の影響や、新たな音楽批評の潮流を知る上で貴重な資料となっています。

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