チャールズ・ソーンダース

サー・チャールズ・ソーンダース：ケベック攻略に貢献したイギリス海軍の英雄

サー・チャールズ・ソーンダース（Sir Charles Saunders、1713年ごろ - 1775年）は、18世紀のイギリス海軍における重要な軍人であり、政治家でもありました。彼の功績の中でも特に有名なのは、七年戦争中のケベック攻略戦における貢献です。この戦いでの活躍により、彼はバス勲章を受勲し、ナイト爵を授与されました。また、彼は1754年から庶民院議員としても活動し、政治の世界でもその存在感を示しました。

生い立ちと海軍入隊

ソーンダースの生年は明確ではありませんが、サマセットシャーで生まれたとされています。1727年、親族の支援を受けてイギリス海軍に入隊し、軍人としてのキャリアをスタートさせました。1739年には、中尉としてジョージ・アンソン提督の旗艦センチュリオン号に乗り組み、世界周航に参加しました。この経験は、彼の海軍士官としての基礎を築く上で非常に重要なものとなりました。

軍人と政治家の二足の草鞋

1749年、戦争終結に伴い、ソーンダースは半給となります。この時期から彼は、軍人としての活動と並行して政治の世界にも足を踏み入れました。「アドミラルボロー」と呼ばれたプリマスの選挙区で議員を務めた後、ヨークシャーのヘドンに移り、生涯にわたってその地を代表する議員として活動しました。1752年には海軍に復帰し、1754年にはグリニッジ病院の出納官、1755年には海軍の監査官を歴任するなど、多岐にわたる役職をこなしました。

七年戦争とケベック攻略

1756年に七年戦争が勃発すると、ソーンダースは青色艦隊の少将に任ぜられ、エドワード・ホーク提督の補佐として地中海艦隊に加わりました。その後、ブレスト郊外の海峡艦隊での任務を経て、1757年にはウィリアム・ピット首相による海兵隊の重視と、植民地における対フランス戦の重視という政策のもと、カナダ方面での作戦に参加することになります。1758年のルイブールの戦いでのイギリス軍の勝利は、セントローレンス川経由でのケベック攻撃への道を開きました。

1759年、ソーンダースは青色艦隊の中将に昇進し、旗艦ネプチューンでカナダへ向かいました。フィリップ・デュエル少将、チャールズ・ホルムズ少将、そして陸軍の指揮官であるジェームズ・ウルフ将軍と共に、ケベック攻略作戦に参加します。総勢49隻の軍艦と119隻の輸送船からなる大艦隊を率いて、ソーンダースはセントローレンス川を遡上しました。

セントローレンス川の航行は極めて困難でした。正確な海図が存在せず、大型船が安全に航行した例がなかったからです。ソーンダースは、商船の船長たちを動員して川の調査を行い、フランス軍が撤去したブイや水路標識の代わりに、自ら水路を確立しました。慎重な調査と測量によって、艦隊はついにケベックへと到達しました。

6月27日、ソーンダースはウルフ将軍のオルレアン島上陸を援護しました。ケベック攻略の成否は海軍の働きにかかっており、8月末にはウルフ将軍の部下であるロバート・モンクトン准将、ジェームズ・マレー准将、ジョージ・タウンシェンド准将とソーンダースによる戦略会議が行われました。その結果、エイブラハム平原での決戦に向けて、会戦前夜に兵士たちをセントローレンス川から崖を上らせて台地に配置するという大胆な作戦が実行されました。ソーンダース自身が「非常に批判されるべき、そして実に適切でうまく指揮された作戦」と評したこの作戦は、世界初の本格的な陸海両用作戦として知られています。

戦闘後も共同作戦は継続され、9月18日にはケベックのフランス軍駐屯部隊が降伏しました。この作戦の成功には、航海術や測量技術の向上が大きく貢献しており、ジェームズ・クックも航海長として参加し、セントローレンス川の調査で名を上げました。ソーンダースは後に、クックが作成した海図の出版許可を海軍省から得ています。

ケベック攻略後、ソーンダースは帰国し、翌春に再びケベックに戻りました。

その後

ケベック攻略後、ソーンダースは地中海での任務に戻り、財宝船を拿捕するなどして財産を増やしました。海軍大臣を務めた後、1761年にナイトに叙爵され、その後は庶民院議員としてニューファンドランド漁業の保護に尽力しました。1762年10月には、白色艦隊の海軍中将に昇進しました。

1775年 12月7日、ソーンダースはロンドンで死去し、ウェストミンスター寺院のウルフ将軍の墓所の近くに埋葬されました。ホレース・ウォルポールは、ソーンダースについて「最も無口で、最も価値のある人物」と評しています。

1775年、ジェームズ・クックは航海中にキャンドルマス島とモンタギュ島の間に島を発見し、ソーンダースにちなんでソーンダース島と名付けました。

サー・チャールズ・ソーンダースは、軍人、政治家として多岐にわたる分野で貢献し、その功績は後世にまで語り継がれています。

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