チャールズ・バートラム

チャールズ・バートラム：偽書「Description of Britain」の発見者

チャールズ・バートラム（1723-1765）は、デンマーク在住のイギリス人で、古代ローマ時代のイギリス（ブリタンニア）に関する偽書「Description of Britain」（De Situ Britanniae）の「発見者」として知られています。しかし、実際には彼自身が偽造した可能性が高いと考えられています。

生涯

ロンドンで絹織物職人の息子として生まれたバートラムは、1738年または1743年にデンマークのコペンハーゲンに移住。父は衣料品店を開業し、バートラム自身は1747年にコペンハーゲン大学に入学を許可され、王立図書館司書のハンス・グラムと親交を深めます。1748年には英語の講義を始め、1749年にはデンマークで最初の英語に関する論文を発表するなど、学者としての道を歩み始めました。

「Description of Britain」の登場

1746年、グラムの勧めで、バートラムはイギリスの考古学者ウィリアム・ステュークリに手紙を書きました。バートラムは当初躊躇しましたが、最終的に手紙を送り、ステュークリは1747年6月にこれを受け取りました。その後のやり取りの中で、バートラムは「Description of Britain」の原本はイギリスの古文書館から盗まれたものであり、秘密保持を条件に複写を許されたと主張しました。グラムはイギリスでも信頼されていたため、ステュークリはこの文書の信憑性を疑いませんでした。グラムの死後、ステュークリはバートラムから文書の複写を入手しました。コットン文書館の学芸員キャスリーは、この文書が400年前のものであると発表しました。ステュークリはバートラムに原本の入手を依頼しましたが、バートラムはこれを拒否しました。

偽書の発覚

ステュークリは長年この文書を研究し、1756年にロンドン考古協会で発表、1757年に研究成果を出版しました。この文書は、エドワード・ギボンの『ローマ帝国衰亡史』やイギリス最初の地理調査を行ったウィリアム・ロイの地図にも影響を与えました。しかし、1860年代になって本格的な研究が始まり、1866年と1867年のウッドウォードの研究や1869年のメイヤーの研究によって、ついに偽書であることが明らかになりました。

学者としての晩年

1756年、バートラムはステュークリの推薦でロンドン考古協会の会員となりました。その後も言語学の分野で活動し、尊敬される学者として1765年にコペンハーゲンで生涯を終えました。

主要著作

An Essay on the Excellency and Style of the English Tongue (1749)
Rudiments of English Grammar (1750)
Ethics, from Several Authors, the Words Accented to Render the English Pronuntiation Easy to Foreigners (1751)
The Royal English–Danish Grammar (1753, 1765)
Wohlunterrichterer Schilderer und Mahler (1755)
Three Authors on the Ancient History of the British People (1757)
The History of the Britons (1758)
On the Great Advantages of a Godly Life (1760)
* A Statistical Account of the Danish Army (1761, 1762)

バートラムの偽書は、長年にわたり多くの研究者を欺き、歴史研究に大きな影響を与えました。彼の学術的な業績は評価されるべき点もありますが、偽書事件は彼の名に拭い去れない影を落としています。

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