チュベイ

チュベイ（Čübei）について

チュベイは、詳細な生没年は不明ですが、モンゴル帝国の皇族として重要な役割を果たした人物です。彼はチャガタイ家に属し、皇族の血を引く者として、その後の政治的な動きに大きな影響を与えました。彼の氏名は『元史』では豳王出伯、ペルシア語ではچوبی（Chūbaī）として知られています。

家系と初期の経歴

チュベイは、チャガタイ家の第5代君主アルグの次男であり、チンギス・カンのまたその子孫となります。アルグが亡くなった後、彼の兄であるムバーラク・シャーが第6代君主となります。ムバーラク・シャーが即位すると、チュベイは彼に従い、中央アジアのチャガタイ・ウルスに留まりました。しかし、その後、ムバーラク・シャーの従兄弟であるバラクが第7代君主として登場すると、次第に内部での対立が生じていきました。

至元8年、バラクの急死（暗殺説もある）を受けて、ムバーラク・シャーとその兄弟カバンは、カイドゥという人物と連携し、バラクの遺児ドゥアと争うことになります。しかし、カイドゥの支持を受けて擁立された傍系のニグベイが登場するなど、チャガタイの内紛は深刻化しました。結果として、チュベイとカバン兄弟はカイドゥとも対立し、最終的にはクビライの元へ亡命することとなります。

主要な活動と影響

亡命後、クビライはチュベイに河西回廊の西部の牧地と領民を与えました。これにより、チュベイはクビライ政権の一部として地位を確立し、オゴデイ・ウルスとの対立を中心に河西回廊の防衛に重要な役割を果たしました。この地域は、チュベイの祖先であるチャガタイが生きていた頃からの影響力がありました。

至元19年には、ドゥアがカイドゥと和解してチャガタイ家の当主となると、チュベイは彼との権力争いに巻き込まれることになります。ドゥアとクビライのもとにいるチャガタイ裔の間で、支配地域を巡る争いが激化しました。チュベイは沙州（敦煌）周辺を支配し、前線の指揮を執ることで、次第に名を上げていきました。

長い歴史の中で、チュベイは大徳8年に威武西寧王に封ぜられ、さらに大徳11年には河西地方における最高軍権を握りました。新しいカアンであるカイシャンはチュベイを豳王に任命し、以後、チュベイ家は皇族としての地位を保持しました。

チュベイ家の後継と影響の継承

チュベイの死後も、彼の称号や河西のチャガタイ系王族の盟主の地位は、彼の子であるノム・クリや孫のノム・ダシュによって受け継がれました。チュベイ家は、元の北走後も河西地方の西部で影響力を維持していました。しかし、明の侵攻により、彼らは次第に勢力を落としていき、最終的には1391年に明軍によって最後の豳王が殺害されるという悲劇を迎えます。

不完全ながらも、元の時代以降もチュベイ家の子孫は地域に残存しているモンゴル系集団と共に活動し続け、特に16世紀初頭にはドゥアの後嗣による併合が行われました。こうしてチュベイの名は、その後もモンゴル歴史の中で語り継がれていくのです。

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