河西回廊

河西回廊：歴史と文化が交差するシルクロードの要衝

河西回廊（かせいかいろう）は、中国北西部の甘粛省に位置する、東西に細長く伸びる地域です。チベット高原の北西端に接し、黄河の西側にあることからこの名で呼ばれています。日本では一般的に「河西回廊」という名称が使われています。古来より、シルクロードの重要な一部として、東西の文化交流や貿易において重要な役割を果たしてきました。

地理

河西回廊は、東は烏鞘嶺（うしょうれい）から、西は玉門関（ぎょくもんかん）まで、南北は南山（祁連山脈と阿爾金山脈）と北山（馬鬃山、合黎山、龍首山）に挟まれた、東西約900キロメートル、幅は数キロメートルから100キロメートル程度の、不規則な形をした細長い平地です。この地域には、甘粛省の蘭州（らんしゅう）や、祁連山脈を水源とするオアシス都市群である「河西四郡」（武威、張掖、酒泉、敦煌）が含まれます。これらの都市は、砂漠を流れる河川によって潤されています。また、漢民族、回族、モンゴル族、ユグル族、チベット族など、多様な民族が居住しています。

気候

河西回廊は、温帯乾燥気候および温帯半乾燥気候に属し、年間降水量は約100ミリメートルと非常に少なく、夏と冬の気温差が大きい典型的な大陸性気候です。秦嶺山脈の北部では、温暖湿潤気候から亜熱帯湿潤気候まで、地域によって気候が大きく異なります。この地域の気候の特徴は、年間降水量が少なく、蒸発量が非常に多いことで、蒸発量は降水量の4.7倍から68倍にも達することがあります。

歴史

古代

紀元前3世紀末までは、遊牧民の月氏（げっし）が支配していましたが、匈奴（きょうど）が勢力を拡大すると、月氏は西方に追いやられ、河西回廊は匈奴の支配下に入りました。

漢王朝

前121年、前漢の武将・霍去病（かくきょへい）が匈奴を破り、河西の地を統括していた渾邪王（こんやおう）が降伏したことで、匈奴の勢力は衰退しました。これにより、前漢の武帝は武威、張掖、酒泉、敦煌の「河西四郡」を設置し、この地域を支配下に置きました。この時を境に、東西交流の道が開かれ、シルクロードが本格的に機能し始めました。河西回廊は、天山山脈や崑崙山脈のオアシスルートに繋がる重要な通路として、中原と西方世界の政治、経済、文化交流の要となりました。

後漢

後漢の初期には、竇融（とうゆう）という人物が、河西五郡（敦煌、酒泉、張掖、武威、金城）を統括する勢力を築きました。しかし、竇融は後漢王朝に帰順し、後漢の支配下に入りました。その後、五胡十六国時代には、前涼、後涼、南涼、北涼、西涼などの諸国が興亡しました。5世紀から7世紀にかけては、青海地方の鮮卑系の遊牧民である吐谷渾（とよくこん）がこの地域を支配しました。

唐王朝

8世紀には、唐王朝が河西回廊を支配下に置きましたが、安史の乱により国が乱れると、吐蕃（とばん）の侵攻を受け、一時的に吐蕃の支配下に入りました。唐末、五代、北宋の時代には、帰義軍節度使やウイグルなどの支配・影響を受けました。北宋時代以降は、西夏（せいか）の支配下に入り、その後、モンゴル帝国によって支配されることになります。


河西回廊は、シルクロードの重要な一部として、歴史の中で様々な勢力の支配下に入り、多様な民族が共存する地域として発展してきました。その歴史と文化は、今日までその痕跡を残しています。

関連項目

* 蘭新線：一部はシルクロードと並行して走っています。

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