チョコボの不思議なダンジョン

『チョコボの不思議なダンジョン』は、1997年12月23日にスクウェア（現スクウェア・エニックス）から発売されたPlayStation用ゲームソフトです。ジャンルはダンジョンRPG、いわゆるローグライクゲームに分類されます。1999年3月4日にはワンダースワンにも移植されましたが、どちらも日本国内のみでの発売でした。2010年8月25日には、PS版がゲームアーカイブスで配信されています。

この作品は『チョコボの不思議なダンジョン2』、『チョコボの不思議なダンジョン 時忘れの迷宮』へとシリーズ化されていく元祖であり、その他のチョコボシリーズの原点とも言える作品です。ただし、各作品のストーリー上のつながりはほとんどありません。

ゲーム概要

本作は、ファイナルファンタジーシリーズ（以下、FFシリーズ）のマスコットキャラクターであるチョコボを操作して、ダンジョンを冒険するローグライクゲームです。当時のスクウェアの青木和彦氏とチュンソフト（現スパイク・[[チュンソフト]]）の中村光一氏の間で、「スクウェアが『不思議のダンジョン』を製作する」という計画が始まりました。しかし、開発はチュンソフトではなく、スクウェアとバンプレストが共同で行い、中村氏は製作上のアドバイスなどで監修として参加しています。タイトルは、語感の関係から「不思議のダンジョン」ではなく、中村氏の了承を得て「不思議なダンジョン」となりました。

ゲーム内にはFFシリーズの各種設定が踏襲されており、登場するモンスターも同シリーズでおなじみのものが多いです。しかし、FFシリーズ本編とは異なり、人間ではなく動物やモンスターたちが暮らす独自の作品世界が構築されています。キャラクターデザインはバンプレストのスタッフによってデフォルメされており、そのデザインを担当した板鼻利幸氏は、後にバンプレストからスクウェアへ移籍しています。

ゲームシステムは、ローグライクゲームの基本要素に加えて、FFシリーズでおなじみのATB（アクティブタイムバトル）システムや召喚魔法などが採用されています。「不思議のダンジョン」シリーズの感覚が強く、物語を進めるだけでなく、アイテムの収集、装備品の合成による強化、モンスター図鑑の完成といったコレクション要素も楽しめます。

ワンダースワン版

1999年3月4日には、ワンダースワン（モノクロ）本体と同時発売で『チョコボの不思議なダンジョン for ワンダースワン』としてバンダイより発売されました。スクウェアが協力しています。通常版発売から約1年後の2000年3月23日には、黄色いチョコボカラーのワンダースワン本体同梱限定版も発売されました。

PS版のアレンジ版であり、構成は特に変更されていませんが、モノクロであるため、一部モンスターやイベントなどが変更されています。しかし、グラフィックの完成度は高く、サウンドもワンダースワンのステレオ出力を生かしたものとなっています。

ただし、ワンダースワン本体との同時発売に間に合わせたためか、アイテムが消える、アイテムが消えずに手元に残り続ける、画面が止まる（フリーズ）、突然リセットがかかるなどの不具合が多数報告されています。

ストーリー

主人公のチョコボと相棒のモーグリのアトラは、旅の途中で立ち寄った村で、農夫のチョコボ（カミラパパ）が、欲望を吸収して成長する謎の紫水晶を偶然掘り起こしてしまいます。カミラパパは紫水晶に魂を取り込まれ、同時に不思議なダンジョンが村に出現します。チョコボはカミラパパを救うため、不思議なダンジョンに潜っていくことになります。

ストーリーは3段階に分かれており、第2ダンジョンではアトラも紫水晶に取り込まれてしまいます。各ダンジョンをクリアするごとにエンディングが流れ、次のダンジョンに進むことができます。

主要キャラクター

プーレ（名称変更可能）: 本作の主人公であるチョコボ。プレイヤーの分身です。アトラと共に旅をしていた途中で村に立ち寄り、ダンジョンに挑みます。ツメを武器、クラを防具として使用し、性別は男です。
アトラ: 主人公の相棒であるモーグリ。物欲が非常に強く、第2ダンジョンが生み出される原因となります。性別は男です。
クレール: ダンジョン内で度々遭遇する謎の人物。紫水晶について知っているようです。ある村人と同一人物で、性別は男です。
ウイズ: 貸し倉庫を営むデブチョコボ。
カミラ: アイテム屋の看板娘のチョコボ。実や種、薬を渡すと鉢植えで栽培してくれます。
カミラパパ: 農夫でカミラの父親。紫水晶を掘り出してしまいます。
フォック&レーグラ: 博識な村長と研究家。主人公達に空き家を貸してくれます。
ラスク: 合成屋の主人。村の発展で妻子を村に迎えることになります。
ドル君: ハムホイッスルを使うことでアトラの箪笥からアイテムを持ってきてくれます。ストーリー進行で妻を迎え、6匹の子供をもうけます。
ジャニター: ダンジョン内で店を経営する謎の人物。紫水晶が取り込んだ者の心を操り、具現化した存在です。

ゲームシステム

本作は、基本的に「不思議のダンジョン」シリーズのシステムを継承していますが、独自の要素も多数あります。

ターンアクティブタイムバトル（TATB）

本作では、ターン制システムとFFシリーズのATB（アクティブタイムバトル）システムを組み合わせたTATB（ターンアクティブタイムバトル）を採用しています。移動時は1歩ごとに1ターンが経過しますが、敵が近づくとATBバーが出現し、戦闘時はリアルタイムでゲージを溜めて戦います。バーの伸びるスピードは一定ですが、素早い攻撃はバーが短く、強力な攻撃はバーが長めに設定されています。魔法や技によってバーの長さは変化し、バーをリセットする技を使う敵もいます。攻撃は物理が赤、魔法が青のバーで表現され、青色のバーの方が時間がかかります。

敵はATBバーが満タンになるまで攻撃しません。チョコボが敵から離れて部屋を出ると、敵のATBバーはリセットされます。チョコボ自身のATBバーは、溜まっている途中でも攻撃できますが、バーが少ないと威力が低下し、空振りやすくなります。

このシステムにより、敵に攻撃した後、距離を離してバーをリセットし、再度接近して攻撃する戦法が有効です。そのため、戦闘の難易度は比較的低めですが、バーがリセットされない強敵や部屋の外まで追いかけてくる敵もいます。

アイテム

ダンジョン内で発見できるアイテムは、店で売買することで地上の街を発展させることもできます。首輪、薬、実＆タネ、カードは、ダンジョン内で初登場する際、名前が確定していません（例：キラキラした薬）。アイテムと名前の対応は、ダンジョンに入るたびに変化します。

ツメ＆クラ: チョコボの武器と防具。合成や強化が可能です。マイナスの数字がついているものは呪われています。
首輪: 装備することで良い効果や不利な効果が発生するアクセサリー。呪われているものも多いです。
石: 他のローグライクゲームでいう矢に相当するアイテム。敵にダメージを与えたり、ワープさせたりできます。
本: 読むことで魔法を発動させます。効果範囲が広く、複数の敵を攻撃できます。何度も読んだり、不思議なしおりを使うことで効果がアップします。魔法の種類はファイア、ブリザド、サンダー、エアロ、ディム、シャイン、ドレインの7種です。
魔石: FFシリーズの召喚獣を喚び出すアイテム。攻撃範囲が非常に広いです。入手確率は低く、ダンジョン内の特殊な階層（魔石フロア）を通過するまで見つかりません。
珠: 蹴ることで強力な魔法を発動させます。
薬: 体力の回復など様々な効果を発揮します。鉢植えでの栽培にも使用します。飲んだ後は空のボトルが残り、ダンジョン内の泉などで再び薬を汲んで使用できます。
実＆タネ: 実はHPや元気が回復したり、ATBバーを短くします。タネは3合成時に能力付加等の効果を発揮します。
カード: アイテム鑑定やダンジョン脱出など、様々な効果を発揮します。
不思議なしおり: 本の読解レベルを上昇させます。

装備の合成・強化

チョコボが装備できるのは、ツメ、クラ、首輪、石の4種類で、各1つずつです。ツメとクラは合成による強化が可能です。村の合成屋やダンジョン内のかまどで、2つのツメやクラを合成できます。基本的に最初に選んだ武具に次の武具の能力が付加されます。ストーリーが進むと、タネを組み合わせた3合成も可能になり、特殊な武具を製作することもできます。合成を繰り返すと、突然変異を起こして新たな武具に変化する場合もあります。

属性システム

攻撃には、火属性と氷属性、雷属性と風属性、干渉しない無属性の5つの属性が存在します。例えば、氷属性の敵に火属性の攻撃をするとダメージが上がり、雷属性の敵に雷属性で攻撃すると威力が下がります。攻撃の見た目と属性は一致しないことがあり、魔石、珠、ディム、シャイン、ドレインには属性がありません。

ダンジョン

第1ダンジョン: 最初に潜るダンジョン。最大階数は30階。ボスは、紫水晶がカミラパパの心を元に作り出したデビルチョコボ。
第2ダンジョン: 第1ダンジョンクリア後に入るダンジョン。最大階数は60階。ボスは、紫水晶がアトラの欲望に呼応し具現化したクリシェール。
第3ダンジョン: 最後に潜るダンジョン。ゾロ目の階数ごとに内装が異なります。最大階数は9999階で、それ以降はループします。

ダンジョンの仕掛け

ダンジョン内には、ワナや宝箱、魔法陣など様々な仕掛けがあります。障害となるものだけでなく、チョコボを助けるものもあります。

ワナ: 地面に設置されており、通常は見えません。踏むと様々な効果が発動します。一度踏むと消えるものと、何度も発動するものがあります。「しのびのクラ」を装備するとワナが発動しにくくなります。
スイッチ: 床に設置されたものと壁に設置されたものがあります。床スイッチはワナのように踏むと発動し、壁スイッチは押すと発動します。マイナス効果のものもあります。
魔方陣: 青色と赤色があり、踏むと効果を発動します。チョコボにプラスの効果をもたらすことが多いですが、マイナス効果のものも存在します。
宝箱: アイテムが入っています。開けた際に爆発したり、モンスターが出現するなどのトラップが仕掛けられている場合があります。宝玉で彩られた封印された宝箱は、点火系の魔法か消火系の魔法で開けられます。ドレインの本ならば必ず開けることが可能です。
絵: ダンジョン内の壁に掛かっています。調べるとアイテムを入手できますが、爆発する場合もあります。
かまど: 村の合成屋と同様にアイテムを合成できます。点火系の魔法の本で発動します。
たいまつ: 点火系の魔法で部屋を明るくできます。消火系の魔法で消すことも可能です。
発電機: サンダーの本を読むと起動し、フロア全体が明るくなります。
水路: トード状態でなければ直接渡れません。
リサイクルボックス: 不要なアイテム2個を入れると新たなアイテムを入手できます。

特殊な階層

クレールが登場するイベントが発生した場合、そのフロアは固定マップになります。特定の条件を満たして階段を下ると、魔石が手に入る固定マップの魔石フロアへ飛ばされることがあります。また、指定した階数ごとにジャニターの店が登場します。

第3ダンジョンのオリジナル階層

第3ダンジョンには、特定の階層にオリジナルな構造や敵配置があります。

11階: プリン系モンスターのみ出現。
22階: モンスターは出現せず、本棚、絵画、かまどなどがあります。
33階: ゾンビ系とスケルトン系モンスターのみ出現。
44階: ボム系モンスターのみ出現。
55階: シーフとマジックポット系モンスターのみ出現。ワンダースワン版ではマジックポットの代わりにマリオネイターが登場します。
66階: 第1ダンジョンのボスであるデビルチョコボが出現。
77階: スロットマシンが設置され、コインをアイテムと交換できます。ワンダースワン版では削除されています。
88階: FFVに登場した神竜が出現。
99階: FFVに登場したオメガが出現。
100階: 第2ダンジョンのボス、クリシェールが出現。

101階以降は、下二桁が同一の階層で同じ内容が繰り返されます。

特徴的な要素

ダンジョン内で気絶した場合、装備品以外のアイテムを失い、ダンジョンの外に飛ばされますが、レベルは1下がるだけで装備品とギルはそのまま残ります。村のイベントにより、ダンジョンを脱出するとレベルが1に戻るように設定できます。ダンジョン内で入手できる植木鉢を村に持ち帰ると、薬品と実を使って実やタネを育てることができます。村人には、特定のアイテムを何度もあげるとイベントが発生し、村が発展します。また、一定ターン数以上同じ階層にいると死神が出現し、攻撃を受けると次の階に下ろされます。

FFシリーズに登場した敵キャラが多く登場し、『ファイナルファンタジーV』の神竜やオメガがボスとして登場します。

不思議なデータディスク

PlayStation版には、新作ソフトの体験版やムービー、過去作品の特殊データ（キャラクターが最強になるものなど）を収録した「不思議なデータディスク」が付属していました。ゲームアーカイブス版には付属していませんが、PlayStation版から保存した特殊データは使用可能です。

その他

ゲーム内の3箇所に中村光一氏のメッセージが隠されています。第3ダンジョンは9999階まで到達するとカウントストップしますが、実際には無限に下りられるようです。階段から次の階に降りた際、チョコボが壁の中にいる状態から再開されることもあります。

評価

電撃PlayStationDPSソフトレビューでは、345点と高評価を得ています。アイテム収集や隠し要素の発見、ATBを活かしたシステム、ロード時間の短さなどが評価されました。また、FFの派生作品でありながら、ローグライクゲーム初心者でも楽しめる難易度に調整されている点も評価されています。一方で、操作性の問題点やアイテムの説明不足を指摘する意見もありました。

関連作品

『チョコボのふしぎものがたり』：かとうひろしによる漫画版
『チョコボの不思議なダンジョン Original Soundtrack』：サウンドトラックCD
『ファイナルファンタジーXIII-2』：本作のコンポーザーである浜渦正志氏が手掛けた作品。ムービーのBGMに本作の「アトラのテーマ」のメロディが使用されています。

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