チラミン

チラミンについて

チラミン（Tyramine）は、芳香族L-アミノ酸デカルボキシラーゼという酵素の作用によって体内でチロシンから生成されるアミンです。化学式はC8H11NOで、フェネチルアミンの誘導体の一つとして知られています。チラミンはモノアミン神経伝達物質、例えばセロトニンやノルアドレナリン、アドレナリンなどと構造が類似しているため、神経系においてさまざまな影響を及ぼすことがあります。

チラミンを含む食品

チラミンは動物と植物の両方に広く存在しており、体内ではモノアミンオキシダーゼ（MAO）という酵素によって代謝されます。また、食品中のタンパク質が微生物によって分解されることで、腐敗アミンとしても生成されます。特にチラミンを多く含む食品には、熟成チーズ、赤ワイン、チョコレートやココア、漬物、発酵食品、薫製魚、鳥の肝臓、イチジク、特定の豆類、柑橘類などがあります。これらの食品は、その摂取によってチラミンに由来する影響を受けやすくなります。

作用機序

チラミンは交感神経細胞の神経終末からノルアドレナリンの放出を促進します。放出されたノルアドレナリンは主にα1アドレナリン受容体に結合し、血管を収縮させ血圧を上昇させる効果があります。このため、片頭痛の発作を引き起こす場合もあります。心拍数の上昇も伴いますが、短時間でチラミンを繰り返し摂取すると、ノルアドレナリンの合成が追いつかず、作用が減弱する現象（タキフィラキシー）も見られます。特に、ココアに含まれるチラミンは、血管収縮作用を有するため、大量摂取後に反動的な頭痛を引き起こすことがあります。

また、チラミンはTA1受容体というG[[タンパク質共役受容体]]にも結合することができ、脳や末梢組織で神経伝達物質の機能を調整する役割を担っています。

生合成

チラミンは、チロシンデカルボキシラーゼと呼ばれる酵素によってチロシンから脱炭酸反応を経て生成されます。生成されたチラミンはメチル化を受け、N-メチルチラミンやホルデニン、さらにトリメチルチラミンといったアルカロイドにも変化します。

相互作用

特に注意が必要なのは、モノアミン酸化酵素阻害薬（MAOI）や、結核治療に使われるイソニアジドなど、チラミンを含むモノアミンの代謝に影響を与える薬剤との相互作用です。これらの薬剤とチラミンを多量に同時に摂取すると、致命的な高血圧や重篤な肝障害が生じる可能性があります。具体的には、腸管や肝臓に多く発現するMAOが阻害されることでチラミンが代謝されず、体内に蓄積されることが原因とされています。そのため、チーズなどのチラミンを多く含む食品は、特にMAOを阻害する薬剤の服用中は注意が必要です。この現象は「チーズ効果」として知られています。

結論として、チラミンは体内で重要な役割を果たす生理活性物質である一方で、特定の食品や薬剤との相互作用によるリスクも伴います。健康管理においては、これらの点を十分に考慮することが重要です。

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