チリビケテ国立公園

チリビケテ国立公園（Parque nacional natural Sierra de Chiribiquete）は、南米コロンビア南部に広がる広大な自然保護区であり、カケタ県とグアビアーレ県にまたがるチリビケテ山脈地域をその範囲としています。総面積は約43,000平方キロメートルに及び、これはコロンビア国内の国立公園としては最大、そして熱帯雨林に位置する国立公園としては世界でも最大の規模を誇ります。この公園は1989年9月21日に設立され、その類まれな自然環境と文化遺産としての価値が認められ、2018年にはユネスコの世界複合遺産に登録されました。

公園の景観を特徴づけるのは、独特な形状を持つ多くのテーブルマウンテン、すなわち「テプイ」です。これらの壮大な地形は、太古の地質活動によって形成されたものです。さらにこの地域は、アマゾン熱帯雨林、アンデス山脈、オリノコ川流域、そしてギアナ高地という、四つの異なる生物地理区（エコリージョン）が交わる極めて稀な場所に位置しています。この地理的特性が、維管束植物をはじめ、哺乳類、爬虫類、両生類、鳥類、魚類、そしてチョウ類に至るまで、驚異的な生物多様性を育んでいます。多くの固有種もこの地に生息しており、その生態系は科学的に見て非常に重要です。園内には、季節的な浸水によって特徴づけられるヴァルゼア浸水林のような特別な生息環境も存在します。ここに息づく代表的な動物たちとしては、生態系の頂点に立つジャガーやピューマ、大型のアメリカバク、希少なオオカワウソ、様々なサル類（ホエザル、フンボルトウーリーモンキー）、特徴的な姿のオオアリクイ、小さなコロンビアヒメエメラルドハチドリ、そして実に58種にも及ぶコウモリなどが挙げられます。

チリビケテ国立公園のもう一つの特筆すべき価値は、そこに秘められた古代の文化遺産です。特にテプイの切り立った絶壁には、膨大な数の岩絵が描かれています。公園全体で確認されている岩絵は75,000点を超え、これはアメリカ大陸に人類が初めて到達したとされる約12,000年前にまで遡る可能性が指摘されています。公園の緩衝地帯であるリンドサ山脈にも同様の岩絵が見られます。これらの岩絵には、当時の人々の生活や信仰の様子が克明に描かれています。狩猟や戦いの情景、あるいは踊りや儀式を表す象徴的なシンボルや文様が含まれており、中には崇拝の対象であったと考えられる、ジャガーのような謎めいた動物の姿も見られます。これらの岩絵群は、この地に暮らした先住民の精神世界や社会構造を理解する上で、極めて貴重な手がかりとなっています。

チリビケテ国立公園が世界遺産に登録された際には、複合遺産として自然と文化の両面からの普遍的価値が評価されました。適用された主な登録基準は以下の通りです。

(3) 現存する、あるいは消滅した文化的伝統や文明を示す、類まれな証拠であること。
(9) 陸上および淡水生態系や動植物群集の進化と発達における重要な生物学的・生態学的プロセスを明確に示す例であること。
* (10) 科学的または保全上の観点から普遍的な価値を持つ絶滅危惧種の生息地を含め、生物多様性の保全にとって最も重要かつ意義深い自然生息地であること。

このように、チリビケテ国立公園は、広大な熱帯雨林生態系の保護区であるだけでなく、人類の長い歴史における貴重な痕跡をも内包する、地球上で特別な場所の一つです。なお、公園の周辺地域では、安全確保のためにコロンビア軍によるコカ栽培地の摘発やゲリラ対策などの活動が行われています。

もう一度検索