ツインスクロールターボ

ツインスクロールターボ：低回転と高回転、両立の技術

ツインスクロールターボは、ターボチャージャーの一種で、エンジンのレスポンスとパワーを向上させる技術として知られています。一般的なターボチャージャーでは、排気ガスをタービンホイールに導く流路が1つですが、ツインスクロールターボではこの流路が2つに分割されています。この2分割された流路が、ツインスクロールターボの優れた特性を生み出しています。

ツインスクロールターボの仕組み

ターボチャージャーは、エンジンの排気ガスを利用してタービンを回転させ、その回転によって空気を圧縮してエンジンに送り込む過給機です。低回転域でターボチャージャーを効率的に作動させるには、タービンハウジングのA/R（面積比）を小さくする必要があります。しかし、A/Rを小さくすると、高回転域で排気ガスが流れにくくなり、エンジンの出力向上に限界が生じます。

ツインスクロールターボはこの問題を解決するために、エキゾーストマニホールドからタービンハウジングへの排気流路を2つに分割します。これにより、異なる気筒からの排気ガスの干渉を低減し、低回転域でもスムーズにタービンを回転させることができます。A/Rを小さくする必要がないため、高回転域での出力低下も抑えられます。

シーケンシャルツインターボのように、複数のタービンを切り替える方式や、可変ノズルターボのようにタービンブレードに当たる排気を機械的に制御する方式とは異なります。ツインスクロールターボは、常に1つのタービンを使用し、低回転域でのレスポンス向上に重点を置いています。

ツインスクロールターボのメリット

ツインスクロールターボの主なメリットは以下の通りです。

低回転域からの優れたレスポンス: 低回転域でもタービンが効率的に作動するため、アクセルペダルを踏んでからパワーが出るまでの遅れ（ターボラグ）が少なく、レスポンスが向上します。
低回転域と高回転域の両立: 低回転域ではトルクを、高回転域ではパワーを確保できるため、幅広い回転域で力強い走りを可能にします。
コンパクトな設計: 1つのタービンを使用するため、シーケンシャルツインターボに比べて搭載スペースを小さくできます。
燃費向上: ターボチャージャーによる過給効果で熱効率を向上させ、燃費の改善に貢献します。

ツインスクロールターボのデメリット

一方、デメリットとしては以下の点が挙げられます。

複雑な排気系: 2本の排気流路が必要なため、排気系のレイアウトが複雑になり、設計難易度や製造コストが上昇する可能性があります。
コスト: 切替えバルブ付きのタイプでは、複雑な電子制御が必要となるため、コストが高くなります。

ツインスクロールターボと他のターボチャージャーとの比較

ツインスクロールターボは、シーケンシャルツインターボや可変ノズルターボと比較して、異なる特性を持っています。シーケンシャルツインターボは高回転域でのパワーを重視する傾向があり、スポーツカーに多く採用されています。一方、ツインスクロールターボは低回転域のトルクを重視する傾向があり、GTカーなどに多く採用されています。

ツインスクロールターボ搭載車種

ツインスクロールターボは、多くの自動車メーカーによって様々な車種に搭載されています。例えば、トヨタ、マツダ、スバル、三菱、BMW、プジョー、ルノー、メルセデス・ベンツ、フォードなど、幅広いメーカーの車種で採用されています。具体的な車種については、各メーカーのウェブサイトなどを参照ください。

まとめ

ツインスクロールターボは、低回転域と高回転域の両立、優れたレスポンス、コンパクトな設計、そして燃費向上といったメリットを持つターボチャージャーです。今後ますます多くの車種に搭載され、自動車技術の発展に貢献していくことが期待されます。

もう一度検索