ツェンタ (防護巡洋艦)

ツェンタは、オーストリア＝ハンガリー帝国海軍が建造したツェンタ級小型巡洋艦の1番艦として、その艦歴をスタートさせました。1896年8月に起工され、1897年8月に進水、1899年6月に正式に就役しました。

就役後、ツェンタは遠洋航海に出ます。1899年11月にポーラを出港し、ポートサイド、スエズ、コロンボを経由して、1900年1月にシンガポールに到着。シンガポールで14日間滞在した後、香港、マカオ、上海を訪問しました。さらに日本へ向かい、長崎、鹿児島、佐世保に立ち寄りました。

しかし、中国で義和団の乱が激化すると、ツェンタは急遽呼び戻されることになります。オーストリア＝ハンガリー帝国の大使館員や代表団の避難を支援するためです。75名の乗員がシーモア提督の部隊に加わり、天津を目指しました。ツェンタは装甲巡洋艦カイゼリン・ウント・ケーニギン・マリア・テレジアと合流し、両艦の乗員160名が大沽砲台攻撃の際にドイツ海兵隊を支援しました。この戦闘で、ツェンタの艦長であるKapitän Eduard Thomann Edler von Montalmarが戦死するという悲劇も発生しました。

1901年12月、ツェンタは本国に帰還し、1902年10月まで予備役となりました。その後、現役に復帰すると、ケープタウンへの航海、そして南アメリカのモンテビデオへ向かいました。ブエノスアイレスに到着後、リオデジャネイロを経て、大西洋を横断し、フンシャル、カディス、タンジェ、マラガ、チュニス、コルフ島に寄港、最終的にトリエステへ帰還しました。その後、第一次世界大戦勃発まで、ツェンタは年1回の海軍演習に参加していました。

1914年、第一次世界大戦が勃発すると、ツェンタはモンテネグロの港を攻撃、その後モンテネグロ沿岸を封鎖しました。しかし、同年8月16日、14隻のフランス戦艦を中心とする英仏艦隊がアドリア海に侵入、ツェンタと駆逐艦ウランは捕捉され、北への逃走を阻止されました。ウランを逃がした後、ツェンタはバール沖で砲撃を受け、撃沈されました。乗員179名が戦死しました。海岸にたどり着いた生存者も1916年まで抑留されることになりました。

沈没したツェンタは、1998年に発見され、2002年にその正体が確認されました。その沈没位置は北緯42度9分45秒、東経18度54分40秒と記録されています。

ツェンタの生涯は、世界情勢の激動期と重なり、その活動は世界各地に及びました。その最後は、第一次世界大戦という未曽有の戦乱の中で、乗組員と共に海に没するという悲劇的なものでしたが、その存在は歴史に刻まれています。

参考文献

Zvonimir Freivogel, Austro-Hungarian Cruisers in World War One, Despot Infinitus, 2017, ISBN 978-953-7892-85-2

関連項目

オーストリア＝ハンガリー帝国海軍艦艇一覧
ゲオルク・フォン・トラップ - 海兵隊少尉として本艦に搭乗し、義和団事件に従軍。

参考図書

「Conway All The World's Fightingships 1860-1905」（Conway）
「Conway All The World's Fightingships 1906-1922」（Conway）

外部リンク

'Zenta' (1896)本艦のスペックと艦形図があるページ。（英語）
* SMS Zentaツェンタのスペックがあるページ。

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