ツマベニチョウ

ツマベニチョウ（褄紅蝶）

ツマベニチョウ（学名：Hebomoia glaucippe）は、シロチョウ科に分類されるチョウの一種で、シロチョウ科の中では世界最大級の大きさを誇ります。開翅長は9cmから10cmに達し、その存在感は圧倒的です。

形態

ツマベニチョウの最も特徴的な点は、前翅先端部に見られる三角形の黒い斑紋と、その中にある鮮やかな橙色の紋様です。この模様は、特にオスにおいて顕著に見られます。メスはオスに比べて黒い部分が大きく、全体的にやや黒ずんだ印象を与えます。シロチョウ科のチョウとしては珍しく、非常に強い飛翔力を持っており、その優雅な飛び方は見る者を魅了します。

生態

ツマベニチョウのオスは、開けた明るい場所を好み、人家周辺や林縁を活発に飛び回ります。一方、メスは食草であるギョボクが生える暗い場所に潜んでいることが多いです。成虫は花の蜜を吸うために、よく花に訪れます。

幼虫は一般的に「青虫」と呼ばれるタイプですが、胸部が幅広くなっているのが特徴です。食草はフウチョウソウ科の植物であるギョボクで、幼虫はこの葉を食べて成長します。成虫は、年に4〜5回発生し、4月から11月にかけて見ることができます。

毒性

興味深いことに、オーストリアの研究チームによって、ツマベニチョウの羽や幼虫の体液からイモガイと同じ猛毒の成分（神経毒）が発見されました。これは、カエル、トカゲ、アリなどの天敵から身を守るための防御手段であると考えられています。

分布

日本では、宮崎県が北限とされており、鹿児島県や沖縄県といった南西諸島に分布しています。国外では、東洋区に広く生息しています。

人間との関わり

ツマベニチョウは、その美しい姿から「幸せを呼ぶチョウ」とも呼ばれ、地域の人々に愛されています。鹿児島県指宿市と西之表市では市の蝶に、鹿児島県熊毛郡中種子町と沖縄県八重山郡竹富町では町蝶に、沖縄県国頭郡大宜味村では村の蝶に指定されており、各地のシンボルとなっています。また、中種子町ではツマベニチョウをモデルにしたキャラクター「ベニーちゃん」が町のキャラクターとして親しまれています。

関連情報

食草: ギョボク（フウチョウソウ科）
分類: シロチョウ科
関連種: ツマキチョウ

参考文献

猪又敏男編・解説、松本克臣写真　『蝶』　山と溪谷社〈新装版山溪フィールドブックス〉、2006年、ISBN 4-635-06062-4。
牧林功解説 『日本の蝶』成美堂出版、1994年、ISBN 4-415-08045-6。
日本環境動物昆虫学会編『チョウの調べ方』文教出版、1998年、ISBN 978-4-938489-11-3。

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