ツメナガホオジロ

ツメナガホオジロ（爪長頬白、学名：Calcarius lapponicus）は、スズメ目ホオジロ科に分類される鳥類の一種です。その名前が示す通り、後趾（こうし）の爪が長いのが特徴で、これが和名の由来となっています。英語でも「Lapland Longspur」と呼ばれ、その特徴を表しています。体長は約16cmで、ホオジロ類としては一般的な大きさです。

形態

ツメナガホオジロの形態は、季節や性別によって大きく変化します。

雄の夏羽: 最も色彩が豊かになる時期です。頭頂部、耳羽、喉、そして胸にかけては光沢のある黒い羽毛に覆われます。目の上後方から頸側にかけては鮮やかな白い線が走り、黒い頭部とのコントラストが際立ちます。体の上面は淡い茶褐色で、黒い縦斑が入ります。腹側は白地で、胸や脇腹には黒い斑が見られます。
雄の冬羽: 夏羽で見られた頭部や胸の黒い部分は少なくなり、淡い茶褐色や黄褐色の羽縁に覆われて全体的に地味な印象になりますが、黒い部分が完全に消えるわけではありません。
* 雌: 雄の冬羽とよく似ていますが、全体的により淡い色合いで、黒い模様はさらに不明瞭です。

足は黒褐色をしており、特に後趾の爪が長く発達しています。この長い爪は、雪上や凍結した地面を歩く際に滑りにくくするのに役立つと考えられています。

分布と渡り

この鳥は、北半球の寒冷地に広く分布しています。ユーラシア大陸や北アメリカ大陸の北極圏から亜寒帯にかけてのツンドラや開けた土地で繁殖を行います。繁殖期が終了すると、より温暖な中緯度地域へと長距離の渡りを行います。主な越冬地は、イギリスからヨーロッパ中部、中国東部、ウスリー地方を含むユーラシア大陸の中緯度帯、そして北アメリカ大陸の中央部です。

日本へは、冬季に冬鳥として渡来するか、あるいは渡りの途中で旅鳥として立ち寄ります。しかし、日本国内での渡来数は多くはなく、比較的珍しい冬鳥とされています。主に本州の中部地方以北で観察される機会が多いですが、過去には伊豆諸島や南西諸島を含む日本全国で観察記録があります。越冬中は、農耕地や河川敷、海岸近くの草地などで、他のホオジロ類やスズメなどと一緒に小規模な群れを作っている姿が見られます。

その他

ツメナガホオジロは、日本の野鳥としては、他のホオジロ科の鳥類と共に自然環境の一部を構成しています。観察する際には、その特徴的な長い爪や、季節・性別による羽色の違いに注目すると、識別が容易になります。日本の野鳥一覧にも含まれる存在です。

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