ツルニンジン

ツルニンジン（蔓人参）について

ツルニンジン（学名: Codonopsis lanceolata）は、キキョウ科に属するつる性の多年草です。その名の通り、地下に太い塊根を持つことが特徴で、古くから食用や薬用として利用されてきました。

名称の由来

和名「ツルニンジン」は、その根の形状が同じキキョウ科のキキョウやツリガネニンジンに似て太く、さらにウコギ科のオタネニンジン（高麗人参）にも似ていることに由来します。別名として「キキョウカラクサ」とも呼ばれます。また、地域によっては「ジイソブ」（爺のそばかすの意）という名前でも知られていますが、これは花冠にある斑点が特徴の類似種「バアソブ」（婆のそばかすの意）よりも大きいことに由来します。中国では「羊乳（ようにゅう）」と呼ばれ、「羊奶參」という別名もあります。

分布と生育環境

ツルニンジンは、東アジア一帯の森林に広く分布しています。日本では、北海道から九州まで、平地から高山にかけて自生しており、丘陵地や山地の林内、林縁のやや湿った場所に群生していることが多いです。

形態と特徴

つる性の多年草であり、春になると茎を伸ばし、他の植物に絡みつきながら成長します。茎や根を切ると、白い粘性のある乳液が出て、独特の臭いを放ちます。葉は長楕円形から狭卵形で、側枝に4枚ずつ集まってつきます。花期は晩夏から秋にかけてで、側枝の先に淡緑色の花を一つ下向きに咲かせます。花冠は釣鐘状で、外側は淡緑色、内側には紫褐色の斑紋があります。子房下位で、果実は萼片のついた蒴果となります。
ツルニンジン属は、約55種ほどが知られており、その多くが中国を中心とした東アジアに分布しています。日本では、ツルニンジンの他にバアソブが自生しています。

利用方法

ツルニンジンの地下茎は食用として利用されます。4月から11月頃に掘り上げた塊根を、天ぷらや醤油だれで焼き付けなどにして食します。また、茹でた塊根は、白和え、酢の物、酢味噌和えなどにも使われます。資源保護のため、採取する際には根の付け根を残し、土の中に浅く埋め戻すことが推奨されています。
韓国では「トドック（더덕）」と呼ばれ、代表的な山菜として親しまれています。根はキムチや揚げ物、和え物などに調理され、若芽も食用とされています。野生のものは数が少ないため、栽培も行われています。また、沙参と呼ばれることもありますが、この名称は本来ツリガネニンジン属を指すものです。

また、塊根は薬用としても利用され、「山海螺（さんかいら）」、「四葉参（しようじん）」という生薬として知られています。8月から9月頃に塊根を掘り上げ、細かく刻んで天日乾燥させて調製します。高麗人参に似た効能があると言われており、漢方ではツルニンジン属の他種を含めて「党参（トウジン）」と呼びます。
民間療法では、痰切りや倦怠疲労時に、乾燥させた塊根5グラムを400ccの水で煎じ、1日3回に分けて服用する方法が知られています。また、ホワイトリカーに漬け込んで薬用酒とし、体質に関わらず1日にお猪口1杯程度飲むこともあります。

参考文献

貝津好孝『日本の薬草』小学館、1995年7月20日、102頁。ISBN 4-09-208016-6。
高橋秀男監修 田中つとむ・松原渓著『日本の山菜』学習研究社、2003年4月1日、148頁。ISBN 4-05-401881-5。

外部リンク

* ウィキメディア・コモンズには、ツルニンジンに関するメディアがあります。

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