ツール・ド・フランス1976

ツール・ド・フランス1976：カニバル不在の激戦

1976年のツール・ド・フランスは、第63回目の大会として6月24日から7月18日まで全22ステージで開催されました。

大会のみどころ

例年、優勝争いの中心にいたモルテニチームが不参加となり、絶対的なエースであるエディ・メルクスも不在となりました。前年の覇者であるベルナール・テブネ、ルシアン・バンインプ、レイモン・プリドール、ルイス・オカーニャ、ヨープ・ズートメルクらが優勝候補として挙げられましたが、「カニバル」メルクスの不在は大会全体に大きな影響を与えました。

大会の展開

プロローグでは、後にポイント賞を3度獲得するフレディ・マルテンスが勝利。マルテンスは第1、第3ステージも制し、マイヨ・ジョーヌもプロローグからキープしました。さらに、山岳最初の第7ステージも制覇し、第8ステージまでマイヨを保持する圧倒的な強さを見せました。

しかし、第9ステージは24年ぶりに復活したラルプ・デュエズがゴールのアルプス越え区間。この大会最初の難関ステージで、ズートメルクとバンインプが抜け出し、ズートメルクが区間優勝。総合ではバンインプがズートメルクを8秒差で抑えてトップに立ちました。マイヨ・ジョーヌのマルテンスは、このステージで大きく遅れ、総合3位に後退しました。

続く第10ステージでもバンインプとズートメルクが先頭集団を形成し、ズートメルクが再び区間優勝。しかし、バンインプが1秒差で続き、マイヨ・ジョーヌはバンインプが守りました。このステージを終えて、マイヨ・ジョーヌ争いは大混戦模様となり、総合3位のプリドール、同4位のテブネも1分台差、さらにフランシスコ・ガルドス、ファウスト・ベルトグリオも2分台差で続くという状況でした。

第12ステージからはピレネーステージが始まり、第12ステージではレイモン・デリルが圧勝。上位陣は7分近い差をつけられ、マイヨ・ジョーヌはデリルの手に渡りました。第13ステージを終えて、総合2位のバンインプは2分41秒差、同3位のズートメルクは2分47秒差、同4位のプリドールは4分10秒差と、依然として混戦が続きました。

第14ステージでは、バンインプがデリルの奇襲に対して反撃を開始。メンテ峠を先頭で通過し、ステージを牽引しました。デリルは遅れ始め、バンインプが区間優勝、ズートメルクが2位。デリルは12分以上の遅れを喫し、バンインプがマイヨ・ジョーヌを奪還しました。テブネも大きく遅れ、連覇は厳しい状況となりました。

ピレネーステージ直後の第17ステージは個人タイムトライアル。タイムトライアルを得意としないバンインプでしたが、ズートメルクに1分57秒差をつける健闘を見せ、ズートメルクとの差を4分33秒にまで広げました。テブネは第19ステージでリタイアしました。

第20ステージは最後の勝負ステージと目されましたが、バンインプは区間優勝のズートメルクをマークし、タイム差をほとんど変えずにマイヨ・ジョーヌをキープ。ついに総合優勝を果たしました。

大会のハイライト

ポイント賞のフレディ・マルテンスは、ステージ8勝という圧倒的な勝利数で大会を席巻しました。また、この年には世界選手権・個人ロードも制覇しています。
レイモン・プリドールは、今大会で3位に入り、ツール・ド・フランスの表彰台は8回目となりました。しかし、今大会が最後のツール出場となりました。
* ラルプ・デュエズは24年ぶりにコースに復活し、この大会以降、毎年のようにコースに組み込まれ、ツール・ド・フランスに欠かせない名所となりました。

もう一度検索