ティレル・024

ティレル・024

ティレル・024（Tyrrell 024）は、1996年のF1世界選手権に向けてティレルが開発したフォーミュラ1カーです。この車両は、チームにとって4年目のシーズンであり、ドライバーには片山右京とミカ・サロが起用されました。

概要

024は、前モデルの024を基にすることなく、一から設計された完全な新型車です。特に特徴的なのは、ヤマハから提供された新しいV10エンジンで、サイズがコンパクトかつ軽量であることが024の大きな強みと期待されていました。この特性を生かすために、リアカウルのデザインが他のライバルよりもスリムに配置され、空気抵抗を低減させる工夫が施されています。

ティレルのテクニカルディレクターであるハーベイ・ポスルスウェイトは、サイドポンツーンの位置を他チームよりも後方に配置することで空力性能を向上させ、ウイングを効果的に機能させるアプローチを試みました。また、潤滑システムやギアシフトの改良も行われ、より迅速な対応が可能となりました。このシーズンでは前年型の023で問題となったハイドロリック・サスペンションが取り除かれ、前後とも3本スプリングダンパー方式が導入されています。

シェイクダウンテストでは、特に片山右京のためのポジショニングに問題が生じました。ポスルスウェイトは「コクピットサイズの規定が変更され、右京選手が初めて024に乗った際にはまるでボトルの中に入ってしまった豆のように見えなくなってしまった」と述べています。この問題に対処するため、実戦までにステアリングの位置などが変更される必要がありました。

1996年シーズン

1996年シーズンにおいて、024は前年モデルに比べて大きな進歩を遂げていましたが、使用されたヤマハ・OX11Aエンジンの信頼性不足が影響し、特に片山右京選手はヨーロッパGPを含む8戦連続でのリタイアを経験しました。この結果、チームは翌シーズンにフォードエンジンの採用を決定するに至ります。

OX11Aはヤマハにとって革新的なエンジンであり、軽量でコンパクトな設計が追求されました。しかし、その軽量化に過度に注力したため、剛性が不足し、技術的なトラブルが多発したため、その年は目立った成果を上げることができませんでした。来シーズンにはアロウズとエンジン供給契約を結ぶこととなります。

また、ドイツGPが開催されたホッケンハイムリンクでは、わずかなドラッグを削減するために「全輪フロントタイヤ」を搭載する奇策が実行されましたが、これはグッドイヤータイヤからのクレームにより禁止されることとなりました。サロ選手はシーズン中に3回ポイントを獲得しましたが、片山選手はノーポイントに終わり、翌年はミナルディに移籍することとなりました。シーズン終了時、サロ選手の5ポイントによってチームはコンストラクターズランキング8位で幕を閉じました。残念ながら024はサロ選手の体型に合わせて設計されたため、小柄な右京選手にとってはサイズが大きすぎる結果となってしまいました。

スペック

• - シャーシ

型名: 024
ホイールベース: 2,940mm
前トレッド: 1,700mm
後トレッド: 1,610mm
サスペンション: プッシュロッド、ロッカー式スプリング＆ダンパー
ブレーキ: AP
ホイール: フォンドメタル
タイヤ: グッドイヤー

• - エンジン

型名: ヤマハOX11A
気筒数・角度: V型10気筒・72度
排気量: 2,996cc
スパークプラグ: NGK
インジェクション: ザイテック
燃料・潤滑油: エルフ

F1における全成績

（キー） （太字はポールポジション）

参考文献

• - レーシングオン・アーカイブス vol.04. 三栄書房. (2011). pp. 118-121. ISBN 978-4-7796-1239-8
• - Henry, Alan (ed) (1996). AUTOCOURSE 1996-97. Hazleton Publishing. pp. 86-88. ISBN 1-874557-91-8

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