ティール (アルバム)

ブラック・サバス『TYR』解説

『TYR (ティール)』（表記上は「ᛏᛉᚱ」）は、1990年8月に発表されたブラック・サバスの15枚目のスタジオ・アルバムです。アルバムタイトルや収録曲名には北欧神話が用いられていますが、コンセプト・アルバムと捉えられることに対し、メンバーから否定的な意見も出ています。

制作背景

前作『ヘッドレス・クロス』の暗い歌詞から脱却するため、トニー・アイオミは、歌詞のテーマを北欧神話へと転換しました。しかし、初期に加入したトニー・マーティンはブラックサバスに対し、悪魔崇拝のイメージを持っていたため、歌詞は悪魔やサタンで埋め尽くされていました。そのため、アイオミは歌詞の内容をより繊細なものにするように伝えました。その結果、『TYR』では北欧神話がテーマとして採用されることとなりました。

音楽的には、ブラック・サバスの伝統的なサウンドから大きく逸脱しており、賛否両論を呼びました。コージー・パウエルのドラムが他の楽器を圧倒しているという批判がある一方で、ジェフ・ニコルスによるキーボードの多用が、楽曲に重厚感と独特の雰囲気を与えているという評価もあります。

楽曲について

アルバム収録曲の中でも、特に異彩を放っているのが「Feels Good to Me」です。この曲は、シングルとしてリリースするためにアルバムに収録されたもので、他の楽曲とは音楽的に異質であるとバンド自身も認めています。

ツアーとその後

『TYR』のリリース後に行われたツアーでは、ギーザー・バトラーやブライアン・メイといった豪華ゲストが参加し、話題を呼びました。しかし、ツアー後にライブで演奏されたのは「Anno Mundi」のみでした。

トニー・マーティンは、1992年のソロ・アルバムで「Jerusalem」を再録音しています。また、『TYR』をレコーディングしたメンバーは、1995年に再結成し、18枚目のスタジオ・アルバム『フォービドゥン』を制作しました。

ヴァイキング・メタル・バンド、ティアのフロントマンであるヘリ・ヨエンセンは、自身のバンドのロゴをデザインする際に、本作のアルバム・カバーから影響を受けたと語っています。

収録曲

1. Anno Mundi
2. The Law Maker
3. Jerusalem
4. The Sabbath Stones
5. The Battle of Tyr (Instrumental)
6. Odin's Court
7. Valhalla
8. Feels Good to Me
9. Heaven in Black

パーソネル

トニー・アイオミ - ギター
コージー・パウエル - ドラム、パーカッション
トニー・マーティン - ボーカル
ニール・マーレイ - ベース
* ジェフ・ニコルス - キーボード

『TYR』は、ブラック・サバスの音楽性を大きく広げた作品として、今もなお評価され続けています。

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