テオドール・アイケ

テオドール・アイケ：冷酷なるナチス親衛隊将軍の生涯

テオドール・アイケ（Theodor Eicke, 1892年10月17日 - 1943年2月26日）は、ドイツの軍人であり、国家社会主義ドイツ労働者党（ナチ党）の親衛隊（SS）幹部でした。最終階級は親衛隊大将及び武装親衛隊大将にまで昇進し、第二次世界大戦中には第3SS装甲師団「髑髏」の師団長として戦いました。また、戦前にはナチス強制収容所を監督する監視官という、残虐な役割も担いました。

生い立ちと第一次世界大戦

アイケは、ドイツ帝国領エルザス＝ロートリンゲン地方のフーディンゲンで生まれ、11人兄弟の末っ子でした。父は駅長でしたが、家庭は決して裕福ではありませんでした。実科学校を中退後、1909年にバイエルン王国軍に入隊し、第一次世界大戦では主計官として従軍、二級鉄十字章を授与されました。1914年には結婚もしています。

戦後の混乱と警察官への道

終戦後、アイケは除隊しますが、職が見つからず、工学を学んだり警察官を目指したりします。しかし、ヴァイマル共和政を打倒しようとする過激な政治活動が原因で、警察官としての道は閉ざされます。その後、ルートヴィヒスハーフェンのIG・ファルベン社で産業スパイ摘発の仕事をしていましたが、1932年に逮捕され、懲役刑を宣告されます。しかし、後に仮釈放されイタリアへ逃亡します。

ナチ党入党と親衛隊での台頭

1928年に突撃隊、1930年にナチ党に入党し、親衛隊に移籍します。1933年にドイツへ帰国後、短期間精神病院へ収容されますが、ハインリヒ・ヒムラーによって救出され、ダッハウ強制収容所の所長に任命されます。

「長いナイフの夜」事件での役割

1934年の「長いナイフの夜」事件では、突撃隊幕僚長エルンスト・レームの処刑に関与します。アドルフ・ヒトラーの命令により、部下のリッペルトと共に、レームを殺害しました。

強制収容所監視官と「髑髏部隊」

事件後、アイケは全強制収容所の総監である強制収容所監視官に任命され、「髑髏部隊」を指揮します。彼は強制収容所を統合し、親衛隊髑髏部隊を拡張しました。隊員には「反社会的」な経歴を持つ者も多く採用され、彼らは上官の命令に忠実で、規律を無視する傾向がありました。アイケは隊員に対し、囚人には厳しく接するよう訓示し、その残虐性を助長しました。一方で、内務省や保安警察長官は、SSの行き過ぎを常に監視し、囚人虐待を禁止する命令も出しています。しかし、アイケは事実上、強制収容所を自律的に運営し続けたのです。

武装SS「髑髏」師団長として

1939年、アイケは髑髏部隊を基に武装親衛隊の「髑髏」師団を編成し、師団長に就任します。西部戦線では活躍したものの、捕虜の虐殺事件も発生しています。また、捕虜にした有色人種兵士を射殺するなどの残虐な行為も行いました。

1941年のソ連侵攻「バルバロッサ作戦」にも参加し、1942年のデミャンスク包囲戦では、その指揮能力が評価されましたが、師団は大きな損害を受けました。再編成後、1943年に東部戦線へ復帰し、ハリコフ攻防戦中に偵察飛行中に搭乗機が撃墜され、戦死しました。

人物像と評価

アイケは、冷酷な性格でしたが、戦闘指揮能力は高く、部下からは「パパ」と呼ばれ親しまれていました。その軍歴と強制収容所での残虐な行為は、多くの負の遺産を残しました。

キャリアと受章

アイケは、親衛隊で着実に昇進し、最終的に親衛隊大将及び武装親衛隊大将の地位に就きました。また、鉄十字勲章や騎士鉄十字勲章、柏葉章など多くの勲章を受章しています。

参考文献

芝健介『武装SS ナチスもう一つの暴力装置』講談社、1995年
ハインツ・ヘーネ（著）『SSの歴史 髑髏の結社』森亮一（訳）、フジ出版社
クリス・ビショップ（著）『武装親衛隊1935-45』リイド社
Michael D. Miller（著）『Leaders of the SS & German Police, Volume I』（Bender Publishing）（英語）


アイケの生涯は、ナチス親衛隊の暗部を象徴するものであり、その残虐な行為は歴史に深く刻まれています。

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