テオフィルス

テオフィルスについて

テオフィルス（Theophilus Presbyter）は、11世紀末から12世紀初頭にかけて活動したドイツのベネディクト会修道士です。彼は、中世の様々な技能を詳細に記述したラテン語のテキスト『さまざまの技能について』（Schedula diversarum artium または De diversis artibus）の著者として知られています。

正体に関する議論

テオフィルスは、ベネディクト派修道院Helmarshausen an der Diemelの修道士Rogkerus（Roger of Helmarshausen）と同一人物であると考えられています。Rogkerusはマース川流域のStavelot Abbey出身で、1100年から1107年までケルンのSt. Pantaleon教会で活動した後、1107年にHelmarshausen Abbeyに移ったとされています。この2人が同一人物であるという説は、研究者の間で長らく議論されてきましたが、すべての研究者に受け入れられているわけではなく、別の説も存在しています。

『さまざまの技能について』

『さまざまの技能について』は、1100年から1120年の間に最初に編纂されたと考えられています。この著作の最古の写本は、ウィーンのオーストリア国立図書館（Codex 2527）と、ヴォルフェンビュッテルのHerzog-August-Bibliothek（Cod. Guelf. Gud. Lat. 69 2°）で発見されています。1774年に、ヴォルフェンビュッテルで司書を務めていたゴットホルト・エフライム・レッシングによって再発見され、その抄録が発表されました。

著作の内容と歴史的意義

この著作には、油絵具に関するおそらく最も古い記述が含まれています。この発見は、ヤン・ファン・エイクが15世紀初頭に油絵の技法を開発したとするジョルジョ・ヴァザーリの説を反証するものであり、当時から大きな関心を呼びました。さらに、draw plateを使用したワイヤ製造に関する最古の文献証拠と思われるものも含まれています。これらの記述は、中世盛期の応用芸術で使用された技法を詳細に知る上で非常に貴重な資料となっています。

著作の構成

『さまざまの技能について』は、3つの巻で構成されています。

第1巻： 顔料の製法から始まり、壁画や手写本挿絵など、絵画論に関する記述が含まれています。
第2巻： ガラス絵の製法について詳細に説明しています。
* 第3巻： 金属工芸やオルガンの製法など、幅広い技術について記述しています。

現代における意義

テオフィルスの『さまざまの技能について』は、中世の技術史を研究する上で欠かせない資料であり、当時の芸術家や職人の技術、知識を知るための重要な手がかりとなっています。また、現代の美術や工芸の分野においても、その技術や製法が参考にされることがあります。

出典

テオフィルス 著、森洋 訳『さまざまの技能について』中央公論美術出版、1996年。ISBN 4-8055-0297-5。

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