中世盛期

中世盛期：ヨーロッパの変革期

時代区分と概要

ヨーロッパ史における中世盛期（11～13世紀）は、中世前期に続く発展の時代であり、中世後期の危機へと移行するまでの期間を指します。この時代は、人口の大幅な増加とそれに伴う経済的・社会的な変革、文化・芸術の隆盛、そして宗教・政治的動乱が特徴です。1250年頃の人口増加は、地域によっては19世紀まで超えることのないほどの急激な経済成長をもたらしました。しかし、ペストの流行や戦争、経済停滞などの災難も頻発し、人口増加に歯止めがかかる場面もありました。

政治と社会

西ヨーロッパでは、民族移動時代終焉後の政治・社会組織化が進み、イスラム世界からの科学・哲学の復興、最初の大学の設立（ボローニャ、サレルノ、パリ、モデーナなど）が見られます。バイキングの定住、マジャル人の侵入停止とハンガリー王国の成立、モンゴル帝国の征服など、民族移動や異民族の侵入は、この時代にはほぼ終息しました。

11世紀以降は、アルプス山脈北方のゲルマン人の東への大規模な植民が行われ、グレート・クリアランスと呼ばれる大規模な森林開墾が行われました。カトリック教会は、セルジューク朝トルコへの十字軍遠征を組織し、レバントに十字軍国家を建設しました。バルト海の植民、レコンキスタ、ノルマン人の南イタリア植民なども、人口増加とそれに伴う移動を反映した現象です。

イタリアでは都市国家が台頭し、イベリア半島ではアンダルスの興亡が見られました。アリストテレス著作の再発見はスコラ学の発展につながり、ゴシック建築様式が隆盛を極めました。中世盛期は、14世紀から続く中世後期の危機によって区切られます。

ブリテン諸島

1066年のノルマン・コンクエストにより、イングランドはフランス語を話す貴族の支配下に置かれました。ノルマン人はアイルランドにも侵攻し、スコットランド、ウェールズもイングランドの支配下に置かれました。ウィリアム1世による征服は、イングランドとノルマンディー公国の同君連合を成立させましたが、1204年にノルマンディーはフランスに奪われます。ウェールズはノルマン人の攻撃を受け、長期にわたる抵抗の後、13世紀にイングランドに併合されました。財務省や議会の設立、マグナ・カルタの署名などもこの時代の特徴です。

北ヨーロッパ

スカンディナヴィアは10～11世紀にかけて統一とキリスト教化が進み、デンマークのクヌーズ2世は北海帝国を築きましたが、その後分裂します。ノルウェーはアトランティックの支配地域を拡大しましたが、13世紀には衰退を始めました。スウェーデンはバルト海北部とフィンランド南部に勢力を拡大しました。

フランスとドイツ

カロリング帝国の後継国家であるフランスとドイツは、それぞれ独自の道を歩みました。ドイツは神聖ローマ帝国として統合を深め、フランスは芸術と文学の隆盛を迎えました。13世紀にはドイツ王位継承の争い（大空位時代）が起こりました。13世紀にはドイツにおいて土地の所有と管理方法に大きな変革がありました。

ハンガリー

ハンガリー王国（1000年建国）は、中央ヨーロッパと西ヨーロッパで強大な国家として発展しました。聖イシュトヴァーン1世によるキリスト教化、クロアチアとの同君連合、周辺諸国の併合により、ハンガリーはバルカン半島とカルパティア地方に影響を及ぼす小帝国となりました。

ポーランドとリトアニア

960年頃、ミェシュコ1世によりピャスト朝が創始され、ポーランドは徐々に勢力を拡大しました。しかし、12世紀後半以降は内紛により分裂状態が続きました。

南ヨーロッパ

イベリア半島ではレコンキスタが進展し、ムーア人が徐々に追われました。イタリアでは都市国家が貿易によって繁栄しました。

バルカン半島と東ヨーロッパ

キエフ大公国の盛衰、ポーランドの台頭、13世紀のモンゴル侵攻などがこの地域を特徴づけました。東ローマ帝国は12世紀までバルカン半島を支配していましたが、ブルガリアの反乱などにより衰退し、第四回十字軍によるコンスタンティノープル占領が致命的な打撃となりました。

気候と農業

中世の温暖期と呼ばれる比較的温暖な気候は、農業の発展を促しました。三圃制の導入、新しい農具の使用などにより食料生産が増加し、人口増加につながりました。しかし、14世紀には小氷期に入り、飢饉が発生するようになりました。

騎士道

11世紀には重騎士（ナイト）という身分が普及し、馬上槍試合も考案されました。12世紀には、修道騎士団が台頭しました。貴族階級の世襲化もこの時代に始まりました。

宗教

1054年の東西教会の分裂は、キリスト教会を東西に分裂させました。十字軍は、聖地奪還を目的とした一連の軍事作戦で、東ローマ帝国やイスラム世界との衝突をもたらしました。テンプル[[騎士団]]、聖ヨハネ[[騎士団]]、ドイツ騎士団などの騎士修道会も台頭しました。

スコラ学

アリストテレス著作の再発見は、スコラ学の発展に大きな影響を与えました。トマス・アクィナスなどのスコラ学者は、理性を用いてカトリック教義を擁護しました。

修道院

11～12世紀には修道院生活の黄金期を迎えました。ベネディクト会、シトー会などの修道会が活躍しました。13世紀には、托鉢修道会（フランシスコ会、カルメル会、ドミニコ会、聖アウグスチノ修道会など）が興隆しました。

異端運動

カタリ派やワルドー派などの異端運動が盛んになり、カトリック教会との対立が生じました。アルビジョア十字軍は、カタリ派への弾圧を目的とした軍事行動でした。

貿易と商業

北ヨーロッパではハンザ同盟が台頭し、地中海貿易も活発化しました。マルコ・ポーロなどの探検家による東方への航海も始まりました。

科学と知識

12世紀ルネサンスにより、古代ギリシア・ローマの著作が再発見され、大学を通じて科学・哲学の研究が進みました。アラビア語文献の翻訳も盛んに行われました。

船舶

コグ船、キャラベル船などが盛んに用いられました。

発明と技術

風車、水車小屋、印刷術、火薬、眼鏡、改良された時計、船舶技術などが発明・改良されました。

芸術

ロマネスク様式に続くゴシック建築が隆盛し、多くのゴシック大聖堂が建設されました。絵画、彫刻、写本装飾なども発展しました。

文学

キリスト教、フランス、ブリテン、ドイツなどの様々な文化が、文学に影響を与えました。トルバドゥール詩、ニーベルンゲンの歌、神曲など、多くの作品が書かれました。

音楽

グレゴリオ聖歌、オルガヌム、ポリフォニーなどが発展し、トルバドゥールの音楽も盛んでした。

演劇

この時代には演劇も発展しました。

結論

中世盛期は、ヨーロッパ社会の大きな転換期でした。人口増加、経済発展、文化・芸術の隆盛、宗教・政治的動乱など、様々な要素が複雑に絡み合い、近代ヨーロッパへの道を切り開きました。この時代の出来事は、現代社会にも大きな影響を与え続けています。

もう一度検索