テバコモミジガサ

テバコモミジガサ (Parasenecio tebakoensis)

テバコモミジガサは、キク科コウモリソウ属に属する多年草です。モミジガサと比較して全体的に小ぶりで繊細な印象を与え、葉裏の葉脈が際立っている点が特徴です。モミジガサよりもやや希少で、より標高の高い場所に生息しています。

特徴

地下茎: 細長く、地中を横に伸びて先端に新しい株を作って繁殖します。
茎: 直立し、高さは25cmから85cm程度。細く無毛で、紫褐色を帯びることが多く、枝分かれしません。
葉: 互生し、モミジガサに比べるとやや薄い質感です。茎の下部につく葉は円形で、掌状に5から7つに中深裂し、大きさは長さ3.5cmから10cm、幅5cmから17cm程度。両面に縮れた毛が散生します。裂片の先端には鋭い鋸歯があり、葉裏の葉脈が隆起して目立ちます。葉柄は長さ3.5cmから7.5cmで、翼はなく、基部は茎を抱きますが、葉鞘はほとんど発達しません。
花期: 8月から10月。
頭状花序: 円錐状に斜め上向き、または横向きにつき、両性の筒状花のみで構成されます。頭花の柄は長さ1mmから5mm程度です。
総苞: 狭筒型で長さ5mmから6mm、総苞片は1列に5個あります。
花: 一つの頭花は5個から6個の筒状花からなり、花冠の長さは7mmから7.5mm程度です。
果実: 円柱形で長さ5mm程度の痩果となります。冠毛は白色で多数あり、長さ5mm程度です。
染色体数: 2n=52

分布と生育環境

テバコモミジガサは日本固有種であり、本州の関東地方から近畿地方の太平洋側、四国、九州に分布しています。落葉広葉樹林の林床や谷川のほとりなどに生育し、特に四国の剣山、石鎚山から手箱山にかけては群生が見られます。ソハヤキ要素の植物として知られています。

名前について

和名の「テバコモミジガサ」は、最初に高知県の手箱山で発見されたことに由来し、牧野富太郎によって命名されました。種小名の tebakoensis も「高知県手箱山の」という意味を持ちます。

当初、牧野富太郎は本種をモミジガサの変種として記載しましたが、後に独立種として扱いました。その後、コウモリソウ属の分類変更により、現在の学名 Parasenecio tebakoensis となりました。

分類

近年、コウモリソウ属モミジガサ節に属するテバコモミジガサ、モミジコウモリ、モミジガサは、新属 Japonicalia に移され、本種は Japonicalia tebakoensis となっています。

利用

モミジガサと同様に、テバコモミジガサも山菜として利用できます。特に、茎の新葉を天ぷらにして食するのが一般的です。

参考文献

橋本郁三著『食べられる野生植物大事典（草本・木本・シダ）』、2007年、柏書房
加藤雅啓・海老原淳編著『日本の固有植物』、2011年、東海大学出版会
門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花（増補改訂新版）』、2013年、山と溪谷社
牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 5』、2017年、平凡社
* 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名－学名インデックス」（YList）

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