テリチアン

テリチアンについて

テリチアン（Telychian）は、国際層序委員会によって正式に定義された地質時代のひとつです。この時代は約4億3850万年前から4億3340万年前にかけての期間を指し、シルル紀のランドベリ世を三つに分けた後期に該当します。前の時期である中期のアエロニアンから、次の時期である前期シェイウッディアンへと移行する重要な時代です。日本語では、テリヒ期とも呼ばれています。

テリチアンにおける出来事

シルル紀には比較的小規模な絶滅事変が三度発生したことが知られており、その中でも最初に起きたのがIreviken eventです。この事変はテリチアンとシェイウッディアンの境界で発生しました。近年の研究によると、オルドビス紀型の放散虫やフデイシ、コノドントといった生物の40%以上がこの時期に絶滅したことが確認されています。本来は多様性に富んだ浮遊性や遊泳性の生物たちは大きな影響を受けました。放散虫は科レベルでは多様性を保ったものの、属レベルにおいては26%が消失し、三葉虫も同様に深刻な影響を被りました。しかし、浅海域の生物礁はほぼ影響を受けないという現象も見られました。この絶滅事変は約20万年もの長きにわたって続いたとされています。

プロセスと原因

Ireviken eventには8つのデータム・ポイントが存在し、これらは地球の熱エネルギーに密接に関連するミランコビッチ・サイクルとの関係が予測されています。最初の4つのデータム・ポイントはおおよそ3万797年間隔であり、これは地球の自転軸の傾斜角に起因する変化周期に関連しています。次の2つのポイントは約1万6500年から1万9000年の間隔があり、歳差運動との関係があると考えられています。最後の2つは、さらに間隔が空いており、ミランコビッチ・サイクルとの関係が難しいとされています。

この事変は氷河の発達ピーク時に発生し、地球の寒冷化が要因として挙げられます。寒冷化により海洋の成層化が進み、これが海洋無酸素事変を引き起こしたとされています。研究によって、当時の海洋中の酸素濃度が低下し、貧酸素水塊が形成されたことが示されています。特に、ある地域ではほぼ完全な無酸素環境が構築され、有害な硫化物が大量に生成されました。この現象は、局所的ながらも全世界に壊滅的な影響を与えたとされています。

Ireviken eventの後、δ13C値とδ18O値の上昇が認められ、これらの値はそれぞれ、+1.4‰から+4.5‰、-5.6‰から-5.0‰へと上昇しました。この結果は、当時の地球環境における変化を示す重要な指標となっています。

日本におけるテリチアン

日本では、南ウラルから発見されたHaplotaeniatum tegimentumという放散虫群集は、最前期アエロニアン以降から中期テリチアン以前の時代を示す指標とされています。具体的には、福井県の大野市に位置する野尻から影路にかけてみられる飛騨外縁帯の影路累層から、これに対応する放散虫化石が発見されています。このことから、影路累層も同じくテリチアン時代に属する地層であると考えられています。

このように、テリチアンの時代は生物の多様性と環境の変化が密接に関連した重要な時期であり、過去の地球環境を理解する上で欠かせない要素です。

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