テルセイラ島

テルセイラ島：アゾレス諸島の宝石

大西洋に浮かぶアゾレス諸島は、ポルトガル領の美しい火山群島です。その中でもテルセイラ島は、豊かな自然と歴史的遺産を兼ね備えた、ひときわ魅力的な島として知られています。人口は約5万6千人で、アゾレス諸島の中では3番目に大きな面積（396.75平方キロメートル）を誇ります。

壮大な火山と豊かな自然

テルセイラ島は、その名の通り、火山活動によって形成された島です。島の最高峰はセッラ・デ・サンタバールバラ山で、標高1023メートルに達する成層火山です。最新の噴火は2000年に記録されています。火山活動の影響で、島内には多様な地形が広がり、緑豊かな西部と、セッラ・デ・サンタバールバラ山を中心とした北部火山地帯、そして南部の海岸線など、変化に富んだ景観を楽しむことができます。

島の中央部には、マカロネシア地域の照葉樹林や、アゾレスネズミサシとミズゴケの群落など、独特の生態系が存在します。フルナス・ド・エンジョフレという間欠泉や、アルガル・ド・カルヴァンと呼ばれる地下湖、ケイ酸塩の鍾乳石が美しい火山性洞窟など、自然の驚異も数多く見られます。

テルセイラ島は、生物多様性にも富んでいます。モリバト（亜種Columba palumbus azorica）、ズアオアトリ（亜種Fringilla coelebs moreletti）、キセキレイ（亜種Motacilla cinerea patriciae）、タシギ、アゾレスヤマコウモリ、ヨーロッパウナギなど、様々な動植物が生息しており、中央の高原と東海岸のプライア・ダ・ヴィトリア付近の沼地は、ラムサール条約に登録される重要な湿地となっています。

歴史と文化が息づく街並み

テルセイラ島最大の街、アングラ・ド・エロイズモは、かつてアゾレス諸島の首都として栄えました。街の中心部には、大聖堂をはじめとする18世紀までに建設された歴史的建造物が数多く残されており、その美しい街並みは世界遺産に登録されています。現在もアゾレス地域圏の司法の中心地としての役割を担っています。アングラ・ド・エロイズモの西に隣接するプライア・ダ・ヴィトリアも重要な街として発展し、港と空港を備え、オルタやポンタ・デルガダへの定期便が運航しています。

テルセイラ島は、当初「ブラジル島」と呼ばれていました。その名前の由来は、スオウノキのポルトガル名「ブラジル」（赤い木の意）であるとされています。1436年のヴェネツィア製の地図には"I. de Brazi"として既に記載されており、ヨーロッパ中世の伝説の島「ブラジル」と同一視されたこともありましたが、後にテルセイラ島と改名されました。「ブラジル」の名は、現在でもアングラ・ド・エロイズモに隣接するブラジル山に残っています。

アングラ・ド・エロイズモは、アゾレス諸島の首府、海軍の拠点、カトリック教会の司教座として重要な役割を果たし、ポルトガル内戦（1830年～1833年）の間には、マリア2世の宮廷が置かれるなど、歴史の重要な舞台となりました。

交通と戦略的拠点

アングラ・ド・エロイズモの港は、かつては大西洋上の中継地として戦略的に重要な拠点でしたが、現在は地方交通の役割が中心となっています。しかし、現在も海軍軍司令部、海軍学校、そして米軍基地など、軍事施設が置かれており、米軍基地はしばしば欧米首脳の会談の場所としても利用されています。島にはラジェス空港があり、空路によるアクセスも容易です。

パイナップル栽培を中心とした農業も島の重要な産業の一つです。豊かな自然、歴史的遺産、そして戦略的な地理的位置を併せ持つテルセイラ島は、アゾレス諸島の中でも独特の魅力を持つ島と言えるでしょう。

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