テルナ (イタリアの企業)

テルナ(Terna S.p.A.): イタリア送電網を支えるリーディングカンパニー

テルナ(Terna S.p.A.)は、イタリア共和国ローマに本社を置く、イタリア全土の送電網を管理する主要送電事業者です。イタリア証券取引所にも上場しており(BIT: TRN)、同国電力インフラの基盤を担う重要な企業として、国内経済に大きな影響力を持っています。

イタリア電力自由化とテルナの誕生

1962年から、イタリアの電力事業は国有企業エネルによる独占体制が続いていました。しかし、1990年代に入ると、EUによる電力市場の規制緩和政策が推進され、送電網の管理を独立した企業に委ねる必要性が生じました。この流れを受けて、1999年5月、エネルの送電資産管理子会社としてテルナが設立されました。当初はエネルが全株式を保有していましたが、2004年6月には株式の半分がイタリア証券取引所に上場され、民間の資本参加が許されるようになりました。

設立当初は、送電網の所有と管理はテルナが行う一方、送電網の運用はイタリア経済財務省が保有するGRTNが行うという体制でしたが、2005年11月、送電網の効率的かつ安全な運用のため、テルナによる所有・管理・運用の統合体制に移行しました。この体制変更は、設備の所有と運用の一体化が不可欠との判断に基づいています。

エネルからの独立とグローバル展開

2012年には、エネルが保有するテルナの全株式を売却し、両社の資本関係は解消されました。現在、テルナの株式の約3割は、イタリア政府の政策投資銀行であるCassa Depositi e Prestitiと中国の国家電網のジョイント事業であるCDP Reti S.p.A.が保有しています。このことは、イタリア政府による電力インフラへの関与と、国際的な資本連携の重要性を示しています。

同時期に行われた組織再編により、国内規制に基づく送電事業を担当するTerna Rete Italia S.p.A.と、国内外で多様な事業を展開するTerna Plus Srlなどのグループ企業が設立されました。テルナの事業はイタリア国内にとどまらず、モンテネグロ、ウルグアイ、チリなどにも拡大しており、グローバルな送電網事業者としての地位を確立しています。

イタリア送電網の近代化と国際連携

テルナは、イタリア送電網の近代化に大きく貢献しています。2011年にはサルデーニャ島と本土、2016年にはシチリア島と本土を結ぶ送電線が完成し、イタリア国内送電網の98％以上を管理するようになりました。2019年11月には、モンテネグロとイタリアを結ぶ海底電力ケーブルの運用を開始し、イタリア、モンテネグロ、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、ルーマニアの送電網が統合されました。この海底ケーブルの製造は、住友電気工業がプリズミアンから受注したものです。

日本との関係

テルナは日本企業とも積極的に連携しています。2012年には東芝がモンテネグロの発電施設からイタリア東部への送電システムを受注し、2013年5月には日本ガイシがテルナから電力貯蔵用の大規模電池システム設備を受注しました。これらの事例は、日本企業の高度な技術力と、テルナの国際的な事業展開がうまく融合していることを示しています。

まとめ

テルナは、イタリア電力自由化の中で生まれた送電網管理企業として、イタリア国内の電力インフラを支える重要な役割を果たしています。エネルからの独立、グローバルな事業展開、そして日本企業との連携を通して、テルナはますますその存在感を増しています。今後も、イタリアの電力システムの安定性向上と、国際的な送電網の統合に貢献していくことが期待されます。

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