テレビに出たいやつみんな来い!!

『テレビに出たいやつみんな来い!!』：異色のバラエティ番組とその波乱の幕切れ

1982年、日本テレビ系列で放送されたバラエティ番組『テレビに出たいやつみんな来い!!』（通称「テレ来い」）は、わずか10回で幕を閉じた伝説の番組だ。ツービート（ビートたけし、ビートきよし）が司会を務め、一般参加者や若手芸人たちが持ち芸を披露し、3人の審査員が合否を判定するという、アメリカの人気番組『ザ・ゴングショー』を彷彿とさせる形式だった。しかし、その内容は一般的なバラエティ番組の枠をはるかに超える、過激で型破りなものであった。

番組を特徴づけたのは、参加者たちの奇抜で、時に下品な芸の数々だ。「シャネルズ」と名乗るグループのチョコレート舐め合い、全身をガムテープで巻いた「ミイラ男」、女性用下着を使った早野凡平のパロディ「下着ホンジャマー」、さらには男性器を露出するパフォーマンスなど、放送倫理ギリギリ、もしくはそれを越えるような内容が次々と繰り広げられた。これらの過激なパフォーマンスは、番組の早期打ち切りに繋がった大きな要因と言えるだろう。

審査員には、近江俊郎、大友柳太朗、大貫久男といった著名人から、お笑い芸人、俳優まで幅広い顔ぶれが揃っていた。その中には、グアム島で発見された元日本兵の横井庄一や、一億円拾得事件で知られる大貫久男も含まれており、バラエティに富んだメンバーが番組に彩りを加えた。また、『おてんば宇宙人』で主演を務めた高見知佳も出演し、たけしから番組打ち切りのことなど、散々からかわれていたというエピソードも残っている。

番組内では、「おたけちゃんスペシャル」というコーナーも存在した。このコーナーでは、合格者の中から今週のチャンピオンを選出し、トークを展開。ビートたけしによる「街で見かけた変な写真」という企画は、後年の『スーパージョッキー』や『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』の企画に影響を与えたと言われている。

番組のもう一つの特徴として、芸が酷すぎる参加者をたけしの指示で強制的に退場させる「強制退場のおにいさん」の存在が挙げられる。全日本プロレス所属の大熊元司が務めたこの役柄は、番組の過激さを象徴する存在だった。最終回までに14回の強制退場があった他、再強制退場、芸の途中でカーテンが降りてくる自然消滅、自主退場なども発生している。強制退場となった参加者の中には、後の大川興業総裁である大川豊や、後に『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』で人気を博したニューハーフのセリーヌ管（当時管正春）も含まれる。セリーヌ管は、女子学生の制服姿で『アタックNo.1』を歌った後、強制退場となっただけでなく、勝手にステージに戻ってきてしまい、史上初の再強制退場という記録も残している。

興味深いのは、若手時代の片岡鶴太郎が、本名である荻野繁雄名義で毎週出演していたことだ。「ミイラ男」や「下着ホンジャマー」などの過激な芸を披露した片岡は、たけしから1ヶ月15万円のギャラを受け取っていたという。審査員からは「プロになれる」と評価されたものの、最終回では強制退場という結末を迎えている。

番組プロデューサーの人見英夫は、「自分の才能や恥部を隠していた時代はもう終わり。いまやそれをさらけ出す時代。“一億総馬鹿”の親分のような、ワーストNo.1と呼ばれる番組になりたい」と語っていたという。優勝賞品はグアム旅行と10万円、オーディション落選者には交通費1000円のみという、番組の過激さを反映した設定も見られた。

『テレビに出たいやつみんな来い!!』は、その過激な内容と短命な放送期間にも関わらず、独特の個性と伝説的なエピソードを残し、現在でも語り継がれる番組となっている。

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