テンダー・グリーン

テンダー・グリーン

1985年秋、宝塚歌劇団花組によって宝塚大劇場で上演されたミュージカル・プレイです。正式名称は『テンダー・グリーン』とされ、同年9月20日から11月5日までの日程で公演が行われました。なお、東京宝塚劇場での上演はありませんでした。

この作品は、作・演出を手掛けた正塚晴彦氏にとって、宝塚大劇場でのデビュー作という記念すべき一作となりました。併演は『アンドロジェニー』-麗しき乙女たち-でした。

全13場で構成されるこの舞台は、数百年後の遠い未来の地球を舞台としています。物語の主人公は、戦闘要員として訓練を受け、そのために感情を極力抑圧するように仕向けられた新人類の青年ソーンです。

ある時、ソーンは搭乗機が不時着したことにより、見知らぬ森で大怪我を負います。絶体絶命の彼を救ったのは、森に暮らす青年カイトとその妹メイ、そして彼らの一族でした。彼らは、今から約200年前に都市文明に見切りをつけ、より人間らしい生き方を求めて森へと移り住んだ人々の末裔であり、素朴ながらも豊かな人間性を保ち続けていました。

この未来社会に生きる、感情を閉ざした若者が、偶然迷い込んだ森で、失われつつある人間性や温かさを大切にする人々との触れ合いを通じて、心の交流を深めていきます。そして、彼らから真の意味での人間らしさ、そして愛の尊さを学んでいく過程が描かれています。高度に発達した文明社会と、自然の中で生きる人間性豊かな共同体という対比構造が、物語の核となっています。

主なスタッフ

作・演出：正塚晴彦
作曲・編曲：寺田瀧雄、高橋城
音楽指揮：野村陽児
振付：司このみ
装置：大橋泰弘
衣装：任田幾英
照明：勝柴次朗
小道具：榎本満春
効果：林康彦
音響監督：松永浩志
演出助手：谷正純
舞台進行：馬場弘和
制作：田中拓助

主な配役

本公演の主要キャストは以下の通りです。（括弧内は新人公演の配役）

ソーン：高汐巴（真矢みき）
カイト：大浦みずき（友麻夏希）
メイ：秋篠美帆（水原環）
カーン：朝香じゅん（安寿ミラ）
アズ：あごうさ知（大空希望）
フィール：宝純子（三矢直生）
エイブル：美野真奈（峰丘奈知）
スタウト：瀬川佳英（舵一星）
クラウド：なかいおり
ナーヴ：青柳有紀
ナーク：但馬久美
* アヌーフ：北小路みほ

主題歌

この作品を代表する楽曲として、主題歌「心の翼」があります。作詞は正塚晴彦氏、作曲は高橋城氏が手掛けました。この歌は、作品の世界観やテーマを象徴する楽曲として、現在も宝塚歌劇団のイベントなどで歌い継がれる名曲となっています。

『テンダー・グリーン』は、未来社会における人間のあり方と、変わることのない大切な感情を描き出し、特に主演の高汐巴をはじめとする当時の花組生たちの熱演と、正塚晴彦氏の繊細な演出により、観客に深い感動を与えた作品として記憶されています。

もう一度検索