ディボスロスクス

ディボスロスクス（Dibothrosuchus）

ディボスロスクスは、ワニ形上目に属する偽鰐類の一種で、特に中華人民共和国の雲南省で発見された化石に基づいて記載されています。この属の化石は下部ジュラ系の地層から得られ、主にシネムーリアン階からプリンスバッキアン階の時代に遡ります。ディボスロスクスの化石は、複数の部分的な骨格と頭蓋骨を含んでおり、その重要性から多くの研究がなされています。

研究史

ディボスロスクスは、1965年にD.J. Simmonsによって名付けられました。杉本神父が担当した中国の輔仁大学の研究チームが泥岩から回収した化石がホロタイプ標本BMNH R7557となっています。1985年には、アメリカと中国の合同遠征隊が新たな化石を発見し、研究がさらに進展しました。これらの化石は禄豊層群のZhangjiawa層から得られ、他のワニ形類よりも若い地質年代のものとされています。

当初、ディボスロスクスはオルニトスクス科の一部として記載されていましたが、後にスフェノスクス科に再分類されました。さらに、第二の種としてD. xingsuensisがWuによって1986年に命名されましたが、後の研究によりD. elaphrosのジュニアシノニムであることが分かり、現在はタイプ種のみを含む単型の属とされています。

特徴

ディボスロスクスは推定全長約1.3メートルに達し、頭蓋骨は非常に強固な構造を持っています。頭蓋骨の長さは16.4センチメートルであり、その中には前上顎骨に5本、上顎骨に17本の歯があります。また、上顎骨と前上顎骨の間には小さな穴があり、ここに大型の下顎の歯が収納される仕組みとなっています。頭蓋骨の最上部にはいくつかの小さな稜があります。

方形骨には3つの背側突起が存在し、これが頭蓋天井と神経頭蓋にしっかりと縫合されます。耳嚢の構造は現生のワニに類似しており、高い聴力を持っていたと考えられています。このため、ディボスロスクスは現生のワニと同様に発声能力があり、音波でコミュニケーションを取ることができたと推測されています。

また、烏口骨には後ろに伸びる長いpostglenoid processがあり、上腕骨の前側には楕円形の窪みが見られます。橈骨と尺骨の長さが中手骨よりも長いため、陸上での四足歩行に適した細長い四肢を持っていたと考えられています。

分類

ディボスロスクスはWu and Chatterjee（1993）の研究によってワニ形上目の属として分類されています。Adams（2013）による系統解析では、ディボスロスクスはテレストリスクスと姉妹群を形成し、Clocodyliformesの外群に位置付けられています。この系統樹において、ディボスロスクスはグラシリスクスよりも派生的で、プロトスクスなどのClocodyliformesよりも基盤的な位置にいることが示されています。ディボスロスクスの特徴的な形態と進化的意義は、ワニ形上目の多様性を理解する上で非常に重要な役割を果たしています。

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