プリンスバッキアン

プリンスバッキアンについて

プリンスバッキアンは、前期ジュラ紀に位置する地質時代で、約1億9080万年前から1億8270万年前までの期間を指します。この地質時代の名称は、ドイツのバーデン＝ヴュルテンベルク州にあるプリンスバッハから由来しています。興味深い点として、「プリンスバッハ階」や「プリンスバッキアン階」という名称は、この時代を直接示すものではなく、地層の層序名を意味しています。また、地質年代の「プリンスバッハ期」と「プリンスバッキアン期」は、こうした層序名に対する対の関係にあるため、しっかりと理解することが重要です。

地質学的定義

プリンスバッキアンの始まりを特定する手掛かりとして、特定のアンモナイトの種が初めて登場する地点があります。具体的には、Bifericeras donovani、属アポデロセラス、およびグレヴィセラスがその例です。さらに、イングランドのヨークシャーに位置するロビン・フッド湾近くのWine Havenが国際標準模式層断面及び地点（GSSP）として指定されています。これは、プリンスバッキアンの基底を示す重要な基準となっています。

生物の多様性

この時期の特徴的な生物としては、アンモナイトのアマルテウスやカナバリア属が挙げられます。これらの種は、日本においても生息が確認されており、特にカナバリアはその生態が後期プリンスバッキアンに特有です。また、ヨーロッパでは魚竜の一種であるレプトネクテスも生息していました。このように、プリンスバッキアンの時代は多様な生物が繁栄した時期でもあったのです。

日本におけるプリンスバッキアンの影響

日本においても、プリンスバッキアンに関連する地質学的な証拠がいくつか確認されています。具体的には、新潟県の蒲原山地の足尾帯に存在するジュラ紀の付加体では、砕屑岩が支配的な下部ユニットがプリンスバッキアンからトアルシアン/アーレニアンの境界に相当する可能性があります。また、宮城県の本吉郡に位置する歌津町や志津川町には、下部ジュラ系の志津川層群があり、砂質泥岩で構成されています。この志津川層群の上部層である細浦層からは、ヘッタンギアンからアーレニアンにかけてのアンモナイトが多く産出しています。

西南日本では、南中国地塊と北中国地塊の衝突が地殻変動を引き起こし、この地域の地質にも影響を与えました。岡山県に分布する山奥層は、火山岩片のウラン・鉛年代測定法から、プリンスバッキアンからトアルシアンの間に堆積したことが示されています。この結果は、富山県の来馬層群と同じ時期にあたることが分かりました。さらに、島根県の鹿足郡吉賀町に位置する樋口層群でも、中部層がプリンスバッキアン階と評価されています。

生物相の変化

プリンスバッキアンからトアルシアンにかけては、アマルテウスのような冷たい海域に特徴的な生物が減少し、逆にカナバリアなどの温暖な海域に適応した生物が増加していく傾向が見られます。この変化は、地質学的に重要な情報であり、地域ごとの生態系の変遷を示しています。ただし、両属の具体的な産出層準については、詳細に解明されていないため、異なる時代に該当する可能性も考えられます。

プリンスバッキアンは、地球の歴史における重要な時期であり、古生物学的に多くの知見を与える興味深い段階です。

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