ディヴェルティメント (パーシケッティ)

吹奏楽のためのディヴェルティメント 作品42

《吹奏楽のためのディヴェルティメント 作品42》（Divertimento for Band, Op. 42）は、アメリカの作曲家ヴィンセント・パーシケッティ（Vincent Persichetti, 1915-1987）によって作曲された、吹奏楽のための楽曲です。この作品は、彼が手がけた初めての吹奏楽曲であり、後の吹奏楽作品への道を開いた記念碑的な位置づけにあります。

作品の誕生は、アメリカの吹奏楽界においてオリジナル作品のレパートリー拡充に尽力したエドウィン・フランコ・ゴールドマン（Edwin Franko Goldman, 1878-1956）からの依頼がきっかけでした。パーシケッティは、その依頼に応える形で1950年から1951年にかけてこの曲を書き上げました。

初演は、1951年にニューヨークのセントラル・パーク内にある野外音楽堂「ザ・モール」にて行われました。演奏を担ったのは、依頼者であるゴールドマン自身が指揮するゴールドマン・バンドでした。この初演は大きな成功を収め、その響きは多くの聴衆を魅了しました。この作品の成功は、作曲家パーシケッティに吹奏楽というジャンルの可能性を強く意識させ、以降、彼は数多くの優れた吹奏楽曲を生み出す原動力となったのです。

編成は、当時の吹奏楽における多様な音色を活かすために、以下のような大規模なものとなっています。

フルート 2パート
ピッコロ
オーボエ 2パート（うち1パートはイングリッシュ・ホルン持ち替え）
E♭クラリネット
B♭クラリネット 3パート
アルト・クラリネット
バス・クラリネット
ファゴット 2パート
アルト・サクソフォーン 2パート
テナー・サクソフォーン
バリトン・サクソフォーン
コルネット 3パート
トランペット 2パート
ホルン 4パート
ユーフォニアム
トロンボーン 3パート
バス（チューバ）
ティンパニ
シロフォン
大太鼓
シンバル
小太鼓
* ウッドブロック

木管楽器、金管楽器、サクソフォーン群、そして打楽器がバランス良く配されており、パーシケッティがこの作品で追求した多様な表現を可能にしています。

曲は全6楽章から構成されており、全体を通しての演奏時間は約10分から11分程度です。各楽章には特徴的なタイトルが付けられています。

1. プロローグ（Prologue）
2. ソング（Song）
3. ダンス（Dance）
4. バーレスク（Burlesque）
5. ソリロクイ（Soliloquy）
6. マーチ（March）

それぞれの楽章が独立した性格を持ちながらも、全体として一つの音楽的なまとまりを形成しています。プロローグで始まり、歌、舞曲、滑稽な音楽、独白的な旋律、そして行進曲で締めくくられるという構成は、「ディヴェルティメント（気晴らし、娯楽）」というタイトルにふさわしく、変化に富み、聴き手を飽きさせない工夫が凝らされています。特に最終楽章のマーチは、アメリカ吹奏楽らしい力強さと華やかさを持って曲を締めくくります。

《吹奏楽のためのディヴェルティメント 作品42》は、パーシケッティの作曲家としての才能を吹奏楽界に知らしめただけでなく、アメリカにおける吹奏楽オリジナル作品の重要なレパートリーとして、今日でも多くの団体によって演奏されています。その音楽的な魅力と歴史的な意義から、この作品はパーシケッティの代表作の一つに数えられています。

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