ディープ・パープル III

ディープ・パープルIII：第一期を締めくくる意欲作

ディープ・パープルIIIは、1969年に発表されたディープ・パープルの3枚目のアルバムであり、第一期メンバーによる最後の作品です。前作、前々作と同様に、ロンドンのデ・レイン・リー・スタジオでレコーディングされ、デレク・ローレンスがプロデュース、バリー・アインスワースがエンジニアを担当しました。

収録曲は全8曲で、ドノヴァンのカバー「ラレーニャ」以外はすべてオリジナルです。ジョン・ロードの悪夢を基にした「影を追って」は、イアン・ペイスのアフリカン・リズムが印象的。ロードのハープシコードとペイスの激しいドラミングが対照的な「ブラインド」や、映画『ローズマリーの赤ちゃん』にインスパイアされたロッド・エヴァンス作詞の「何故ローズマリーは」など、各メンバーの個性が際立つ楽曲が並びます。

本作のハイライトは、リッチー・ブラックモアとジョン・ロードの共作による三部構成の組曲「4月の協奏曲」です。第一部はブラックモアのギター、ロードのオルガン、ペイスのティンパニによるインストゥルメンタルで、女性合唱と混声合唱が加わります。第二部はロード作曲の室内楽形式、第三部はエヴァンスのボーカルをフィーチャーした作品です。この壮大な組曲は、ディープ・パープルの第一期を締めくくるにふさわしい内容と言えるでしょう。

アルバムジャケットは、ヒエロニムス・ボスの三連祭壇画『快楽の園』の右翼「音楽地獄」を白黒で使用し、メンバーの写真をコラージュしたものです。このジャケットも、アルバムの持つ独特な雰囲気を象徴しています。

ディープ・パープルIIIは、アメリカでは1969年6月にテトラグラマトン・レコードから、イギリスでは同年11月にハーヴェスト・レコードからリリースされました。しかし、テトラグラマトン・レコードの倒産により、アメリカでは一時廃盤となります。日本では、『素晴らしきアートロックの世界』という邦題で日本グラモフォンから発売されましたが、こちらもテトラグラマトン倒産により廃盤。その後、『ディープ・パープルIII』と改題され、ワーナー・パイオニアから再発されました。

本作は、サイケデリック・ロック、アート・ロック、ハード・ロックといった様々な要素が混ざり合った、ディープ・パープルの音楽性の探求が色濃く反映された作品です。第一期メンバーの個性がぶつかり合い、創造性が爆発した、彼らのキャリアの中でも重要な一枚と言えるでしょう。

収録曲

1. 影を追って - "Chasing Shadows"
2. ブラインド - "Blind"
3. ラレーニャ - "Lalena"
4. フォールト・ライン - "Fault Line"
5. 画家 - "The Painter"
6. 何故ローズマリーは - "Why Didn't Rosemary?"
7. 小鳥は去った - "Bird Has Flown"
8. 4月の協奏曲 - "April"

参加ミュージシャン

リッチー・ブラックモア - ギター
ロッド・エヴァンス - ボーカル
ニック・シンパー - ベース
ジョン・ロード - キーボード
* イアン・ペイス - ドラムス

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