デインドリーム

デインドリーム：ドイツが生んだ凱旋門賞女王の軌跡

デインドリーム(2008年5月7日 - 2023年8月31日)は、ドイツで生産、調教された競走馬として、その名を世界に轟かせた名馬である。アイルランド生産の母デインドロップと、ドイツ年度代表馬ロミタスを父に持つ彼女は、決して恵まれた生い立ちではなかった。1歳時にはわずか9,000ユーロで取引され、馬主自身も「地元の小さな競馬場で長く走ってくれればそれでいい」と語っていたという。しかし、この期待をはるかに超える活躍を見せることになる。

2歳時は、フランス遠征にも挑むなど積極的なレース運びを見せた。フランスでは欧州牧畜基金クリテリウムで1位入線するも3着に降着、G1マルセルブサック賞では6着と、必ずしも順風満帆とは言えないデビューシーズンとなった。

転機が訪れたのは3歳時。イタリア遠征ではリステッド競走4着、デルビーイタリアーノ3着と好走を見せると、オークスイタリアーノでは6馬身差の圧勝劇で海外重賞初制覇を飾った。続くドイツのベルリン大賞では古牡馬相手に5馬身差で勝利。さらにバーデン大賞でも6馬身差の圧勝で、G1競走2連勝を達成。父ロミタスとの父娘制覇という快挙も成し遂げた。

そして迎えた凱旋門賞。社台ファーム代表の吉田照哉氏がデインドリームの権利の半分を購買し、大きな期待を背負っての挑戦となった。レースでは、道中先行したヒルノダムールのすぐ後ろを追い、残り200メートルで後続を突き放し、5馬身差という圧勝劇で栄冠を掴んだ。ドイツ産馬としては初、ドイツ調教馬としては36年ぶり2頭目の凱旋門賞制覇という快挙は、ドイツ競馬界に大きな喜びをもたらした。さらに、鞍上のアンドレアシュ・シュタルケ騎手にとっても、ドイツ人初の凱旋門賞勝利となった。記録的な好タイムでの勝利も記憶に残る。

凱旋門賞勝利後、最優秀3歳牝馬に選出されたデインドリームは、ジャパンカップにも出走。6着に敗れたものの、その実力を見せつけた。

4歳時にもバーデン大賞を制覇し、キングジョージ6世&クイーンエリザベスステークスでも勝利。凱旋門賞とキングジョージを制した史上初の牝馬となり、ドイツ馬としても初のキングジョージ優勝という偉業を達成した。しかし、凱旋門賞連覇を目指した矢先、馬伝染性貧血の感染拡大により、出走を断念。やむなく現役を引退することとなった。

引退後はイギリス、そして日本へと渡り、繁殖牝馬として活躍。多くの競走馬を産み出した。しかし、2023年8月31日、蹄葉炎の悪化により安楽死の措置が取られた。

デインドリームは、低い評価から世界最高峰のレースを制覇し、繁殖牝馬としても成功を収めた、まさに奇跡の競走馬であった。その輝かしい生涯は、後世の競走馬たちに大きな刺激と勇気を与え続けるだろう。その血統には、高松宮記念を制したキンシャサノキセキも含まれている。彼女の足跡は、競馬史に永遠に刻まれた。

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