トレボニアヌス・ガッルス

ガイウス・ウィビウス・トレボニアヌス・ガッルス：短命に終わったローマ皇帝

ガイウス・ウィビウス・トレボニアヌス・ガッルスは、3世紀のローマ帝国を揺るがした軍人皇帝の一人です。206年頃にエトルリア系名家の出身として生まれ、政治・軍事的キャリアを歩み、250年には執政官に就任。その後、ドナウ川流域のモエシア属州の総督として、ゴート族の侵入を防ぐ重要な任務に就きました。この手腕が、皇帝デキウスからの信頼を得ることに繋がります。

しかし、251年、デキウスと共同皇帝ヘレンニウス・エトルスクスがゴート族とのアブリットゥスの戦いで戦死するという事態が発生します。デキウスの息子ホスティリアヌスもまた共同皇帝でしたが、この混乱の中、モエシアの軍隊はトレボニアヌスを皇帝に擁立。ローマ元老院もこれを承認し、トレボニアヌスは帝位に就きました。

トレボニアヌスは、まずゴート族との講和に努めます。ゴート族がアブリットゥスの戦いで得た戦利品、捕虜（中には技術者も含まれていた）の返還は認められず、多額の貢納と領土侵犯の禁止という条件で講和が成立しました。この講和は、エドワード・ギボンによれば、ローマ市民から強い反発を招いたとされています。その後のホスティリアヌスの疫病死についても、トレボニアヌスへの批判が向けられました。

単独皇帝となったトレボニアヌスは、息子のガイウス・ウィビウス・ウォルシアヌスを共同皇帝に任命します。しかし、彼の治世は長く続かず、サーサーン朝によるシリアへの侵攻や、講和にも関わらず続くゴート族の侵入に苦しめられました。

こうした状況の中、モエシアと上パンノニアの総督マルクス・アエミリウス・アエミリアヌスがゴート族を撃退し、自らの軍隊を率いて皇帝を宣言します。アエミリアヌスはトレボニアヌス打倒のためローマへ進軍を開始しました。トレボニアヌスは、ウァレリアヌスに支援を求め、アエミリアヌスを迎撃しようとしましたが、インテラムナ（現在のテルニ）で息子ウォルシアヌスと共に自軍兵士によって殺害されたのです。

アエミリアヌスは元老院から皇帝として認められ、3ヶ月の間ローマを治めました。しかし、彼の統治も短命に終わります。ライン川沿岸の総督ウァレリアヌスが皇帝を称してイタリアへ侵攻してきた結果、アエミリアヌスは自軍に殺害されたのです。トレボニアヌスの死とアエミリアヌスの短命な統治は、ローマ帝国の混乱を象徴する出来事であり、その後、ウァレリアヌス帝の時代へと移り変わっていきます。トレボニアヌスの治世は、ゴート族との妥協策、そしてその後の内紛という、ローマ帝国の衰亡の兆しを物語る重要な時代として歴史に刻まれています。

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