デキムス・カエリウス・カルウィヌス・バルビヌス

デキムス・カエリウス・カルウィヌス・バルビヌス：知られざるローマ皇帝の生涯

238年、ローマ帝国は「六皇帝の年」と呼ばれる混乱の時代を迎えていました。その中で、デキムス・カエリウス・カルウィヌス・バルビヌスは、僅か数ヶ月の間ながらも、ローマ皇帝の座に就いた人物です。しかしながら、彼の生涯については、多くの謎が残されています。

謎に包まれた出自

バルビヌスの生年は、165年頃とする説が一般的ですが、170年や178年頃とする説もあり、確かな記録は残っていません。彼の出自についても不明な点が多く、父に関しては、184年にカッパドキアの軍団長を務めたカエリウス・カルウィヌスの息子、もしくは157年の執政官ガイウス・カエリウス・セクンドゥスの息子という説が挙げられています。いずれも確証はなく、彼の家族関係は謎に包まれています。妻の存在は示唆されていますが、氏名を含め、一切の記録がありません。

先祖に関しては、137年の執政官プブリウス・コエリウス・バルビヌス・ウィブッリウス・ピウスとその妻アクイリアであるという推測がなされています。仮にこれが事実ならば、バルビヌスは、3世紀を通じて多くの執政官を輩出した名家、クィントゥス・ポンペイウス・ファルコの一族、そして1世紀の政治家で作家としても知られたセクストゥス・ユリウス・フロンティヌスと血縁関係にあった可能性があります。しかしながら、これもあくまで推測の域を出ません。

短命に終わった皇帝としての在位

ゴルディアヌス1世とその息子のゴルディアヌス2世が相次いで暗殺された後、元老院は混乱を収拾するため、バルビヌスとマルクス・クロディウス・プピエヌス・マクシムスを共同皇帝として擁立しました。ゴルディアヌス1世の孫、ゴルディアヌス3世は、民衆の人気を背景に副帝（カエサル）に任じられました。

バルビヌスとプピエヌスは、それぞれ異なる役割を担いました。バルビヌスはローマに留まり、一方プピエヌスは、マクシミヌス・トラクス率いる軍勢の迎撃に向かいました。しかし、マクシミヌス・トラクスが死亡したことで、事態は急変します。二人は激しく対立するようになり、プラエトリアニ（近衛兵）によって、プピエヌスと共に殺害されました。遺体はティベリス川に投げ込まれたと言われています。

悲劇的な最期とその後

バルビヌスとプピエヌスの死後、副帝であった13歳のゴルディアヌス3世が単独皇帝となり、ローマ帝国の混乱は一時的に収束しました。しかし、バルビヌスの短い皇帝としての在位は、ローマ帝国の歴史における、数多くの謎と悲劇に彩られた、短い一ページとして刻まれることとなりました。彼の生涯は、権力闘争と陰謀が渦巻くローマ帝国の暗黒時代を象徴する、一つの事例と言えるでしょう。

参考文献

（ここに参考文献を記述）

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