デケバルス

デケバルス：ダキア王国の英雄、ローマに抵抗した不屈の戦士

デケバルス（生年不詳 - 106年）は、ダキア王国の王として、ローマ帝国のトラヤヌス帝と激しい戦いを繰り広げた人物です。彼の生涯は謎に包まれていますが、ダキアを統一し、ローマに勇敢に立ち向かった英雄として知られています。

生涯

デケバルスの前半生については、詳しい記録が残っていません。しかし、紀元前70年に族長ブレビスタがダキアを統一した後、分裂状態にあったダキアを再び統一したのがデケバルスであったとされています。

85年以降、ダキア人はローマ帝国の属州モエシアへ度々侵入し、略奪を繰り返しました。86年、デケバルスはダキア軍の指揮官として、ドミティアヌス帝が派遣したローマ軍を打ち破り、総指揮官コルネリウス・フスクスを討ち取るという大きな勝利を収めました。87年に王位を継承した後も、デケバルスはローマとの戦いを続けました。

88年、ローマ軍がダキアに侵攻し、デケバルスはこれを迎え撃ちましたが、敗北を喫しました。しかし、同時期に高地ゲルマニアで反乱が発生したため、ローマはダキアとの和平交渉に応じました。この和平協定は、ローマがダキアに多額の金銭を支払うという屈辱的な内容であったとされています。

98年にトラヤヌスがローマ皇帝に即位すると、ダキア問題は再び注目されることになりました。101年、トラヤヌス帝は自ら軍を率いてダキアへ侵攻しました。ダキア軍は地の利を生かして抵抗しましたが、ローマ軍の圧倒的な戦力の前に敗れ、102年にデケバルスは降伏しました。

しかし、105年、デケバルスは再び兵を挙げ、ドナウ川流域のローマ属州を攻撃しました。これに対し、トラヤヌス帝は再びダキアへ侵攻し、デケバルスは再び敗北しました。106年、ローマ軍はダキアの首都サルミゼゲトゥサを包囲し、陥落させました。デケバルスは捕虜となることを拒み、自ら命を絶ったとされています。

デケバルスの死後

デケバルスの死によって、ダキアはローマ帝国の属州となり、その支配下に組み込まれることになりました。ローマ市のトラヤヌスのフォルムに建てられた「トラヤヌスの記念柱」には、ダキア戦争の様子が描かれており、後世に伝えられています。

デケバルスは、ローマ帝国の拡大に抵抗した英雄として、ルーマニアを中心に現在でも敬愛されています。彼の不屈の精神は、多くの人々に感銘を与え続けています。

関連項目
* ルーマニア・レウ - かつてルーマニアの紙幣にトラヤヌスと共に描かれていた。

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