サルミゼゲトゥサ

サルミゼゲトゥサ：古代ダキアの心臓部

サルミゼゲトゥサは、古代ダキア人にとって、単なる都市以上の意味を持つ特別な場所でした。軍事、宗教、政治の中心地として、ダキア文明の粋を集めたこの都市は、今日のルーマニアに位置するオラシュチエ山脈の中に、その痕跡を留めています。

天然の要塞都市

標高1200メートルの高地に建設されたサルミゼゲトゥサは、その立地自体が天然の要塞となっていました。狭隘な地形を利用し、周囲のブリダル、ピアトラ・ロシエ、コステシュティ、カプルナ、バニツァといった要塞群と連携することで、強固な防衛システムを構築。敵の侵入を কঠিনにする戦略的な配置がなされていました。

ダキア人の生活と文化

都市の中核は、ムルス・ダキクスと呼ばれる石で造られた四角形の要塞でした。約30,000平方メートルの広さの中に、5つの台地が設けられ、その中心にはダキア人の聖地である「Circular Calendar Sanctuary」が設置されていました。この聖地は、ダキア人の宗教観や天文学の知識を反映した重要な施設と考えられています。

一般のダキア人は、要塞の周辺の山麓に居住していました。興味深いことに、上流階級の居住地区には陶器製の水道管が整備されており、高度な衛生環境が保たれていたことがわかります。遺跡から発掘された陶器や装飾品なども、ダキア人の社会が高度な生活水準を有していたことを物語っています。

ブレビスタ王とローマ帝国の侵攻

サルミゼゲトゥサは、初めてダキアを統一したブレビスタ王によって建設されました。彼のリーダーシップの下、ダキアは勢力を拡大し、サルミゼゲトゥサはその象徴として繁栄を遂げました。しかし、その繁栄も長くは続きませんでした。101年、ローマ帝国皇帝トラヤヌス率いるローマ軍がダキアに侵攻。ダキア王デケバルス率いるダキア軍との間で、激しいダキア戦争が勃発します。

2度目の侵攻となる106年、ついにサルミゼゲトゥサはローマ軍の手に落ち、ダキア全土がローマ帝国の属州となりました。ローマ帝国は、旧都から約40キロ離れた場所に新たな植民市コロニア・ウルピア・トライアナ・アウグスタ・ダキカ・サルミゼゲトゥサを建設し、ローマ軍団を駐屯させました。

世界遺産「オラシュチエ山脈のダキア人の要塞群」

サルミゼゲトゥサを含む6つの要塞群は、その歴史的、文化的価値が認められ、1999年にユネスコの世界遺産に登録されました。「オラシュチエ山脈のダキア人の要塞群」として、世界中の人々から注目を集めています。

サルミゼゲトゥサは、古代ダキア人の栄光と悲劇を物語る貴重な遺跡です。その石畳を踏みしめれば、古代の人々の息吹を感じ、歴史のロマンに浸ることができるでしょう。

関連項目

* ダキア戦争

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