デジタル-アナログ変換回路

デジタルアナログ変換回路（DAC）とは？

デジタルアナログ変換回路（Digital-to-Analog Converter、略称：DAC）は、デジタル形式の電気信号をアナログ形式の電気信号に変換する電子回路です。デジタルデータは離散的な値を持つのに対し、アナログデータは連続的な値を持つため、この変換はデジタル機器とアナログ機器をつなぐ重要な役割を果たします。CDプレーヤー、サウンドカード、ビデオカードなど、デジタル信号を扱う多くの機器に搭載されています。

DACの動作原理

DACには様々な方式がありますが、大きく分けて以下の種類があります。

1. パルス幅変調型: デジタル入力をパルス幅変調信号に変換し、ローパスフィルタで高周波成分を除去することでアナログ信号を得ます。シンプルで、大出力のDA変換にも適しています。D級アンプやチョッパ制御といった用途に用いられます。

2. デルタシグマ型: デジタル入力をオーバーサンプリングし、デルタシグマ・モジュレータで低ビットのオーバーサンプリングデータに変換します。その後、DA変換を行い、ローパスフィルタでノイズを除去します。高精度な変換が可能な一方、処理が複雑になります。現在、普及価格帯の製品に多く採用されている方式です。

3. 抵抗ストリング型: 2ⁿ個の抵抗を直列に接続し、デジタル入力に対応する電圧点をアナログスイッチで選択して出力する方式です。シンプルですが、抵抗の数が増えると回路が大きくなります。

4. 抵抗ラダー型: R-2Rラダー型抵抗回路がよく知られています。オペアンプを用いて、抵抗の組み合わせで電圧を生成します。抵抗ストリング型と比較して、回路規模を小さくできる利点があります。

5. 容量アレイ型: ビットに応じて重み付けをしたコンデンサを充電し、全体の電圧を測定することでアナログ値を得る方式です。

6. 電流出力型: ビットに応じて重み付けした抵抗を並列接続し、電流を出力する方式です。高速化に適しています。電流出力を電圧に変換して利用することが一般的です。

7. RAMDAC: 主にビデオカードで使用されるDACの一種で、Color Lookup Translation（CLUT）機能を持つメモリを搭載しています。インデックスカラーをより多くの色に変換する機能を持ちますが、現在ではGPUにその機能が統合されていることが一般的です。

DACの応用

DACは、オーディオ機器、ビデオ機器、計測機器など、幅広い分野で使用されています。

オーディオ機器: CDプレーヤー、SACDプレーヤー、デジタルオーディオプレーヤー、サウンドカードなど、デジタルオーディオ信号をアナログオーディオ信号に変換するために使用されます。高音質化のために、サンプリングレート、ビット数、回路設計などが工夫されています。外部DACとして、デジタルオーディオプレーヤーなどに接続して音質を向上させる機器もあります。
ビデオ機器: ビデオカードなど、デジタル映像信号をアナログ映像信号に変換するために使用されます。かつてはRAMDACが重要な役割を果たしていましたが、現在はGPUにその機能が統合されることが多くなっています。
計測機器: デジタル信号をアナログ信号に変換し、アナログメーターなどで計測するために使用されます。
デジタルスピーカー: デジタル信号を直接音声に変換するスピーカー。アナログ回路を介さないため、ノイズの低減、高精度な変換が可能です。

DACの高性能化と課題

DACの高性能化においては、S/N比の向上などが重要な課題となっています。量子化ビット数が増えると理論上はS/N比が向上する一方、抵抗の熱雑音や測定限界などにより、理論値に達しない場合があります。そのため、複数のDACの出力を加算するなど、S/N比向上のための技術開発が行われています。また、アナログ段を短縮するための技術開発も進められています。

DACの歴史

1984年にはソニーがDAS-702ESというDACを発売しています。これはCDプレーヤーと共に使用されるもので、デジタル出力に対応していました。

まとめ

DACは、デジタルとアナログの橋渡しをする重要な電子回路です。様々な方式があり、用途に応じて最適な方式が選択されます。今後も、高性能化、高精度化、低消費電力化などが求められるとともに、新たな応用も期待されます。

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