デスティエンヌ・ドルヴ級通報艦

デスティエンヌ・ドルヴ級通報艦：フランス海軍の多用途艦艇

デスティエンヌ・ドルヴ級通報艦は、フランス海軍が1976年から1984年にかけて建造した通報艦です。17隻が建造され、そのうち3隻はアルゼンチン海軍に輸出、さらにフランス海軍で退役した艦艇の一部はトルコ海軍に売却され運用されています。本級は、フランスが海外領土の警備や救難活動を行うための必要性から開発されました。当時のフランスは、アルジェリア戦争後もなお多くの海外県・海外領土を保有しており、それらの地域における洋上警備、救難活動を行うための艦艇を必要としていました。

開発の経緯

本級の開発は、ポルトガル海軍が開発したジョアン・コーチニョ級コルベットの影響を受けています。ジョアン・コーチニョ級は、沿岸から近海域における警備・救難活動、そして対地火力投射能力を備えた低コストな艦艇として高く評価されていました。フランス海軍も同様のコンセプトに基づく艦艇を求めており、デスティエンヌ・ドルヴ級はその結果として生まれたと言えます。当初は、通報艦型（A69型）と艦隊護衛艦型（A70型）の2種類が計画されていましたが、最終的には通報艦型のみが17隻建造されることとなりました。

設計

デスティエンヌ・ドルヴ級は、運用人員の削減と海外領土の簡易な港湾設備での運用を可能とするため、小型化が強く求められました。小型艦でありながら船内容積を確保するため、中央船楼型が採用されています。また、長距離航続性能も要求されたため、ディーゼル主機が搭載されています。具体的には、SEMT ピルスティク12PC2 V400というV型12気筒中速ディーゼルエンジン2基が、両舷2軸の可変ピッチ式スクリュープロペラに接続されています。これはジョアン・コーチニョ級と同じ構成です。主機室は整備性の向上のため、1室構成とされています。航洋性の確保のため、フィンスタビライザーも装備されています。

兵装

本級は、その小型な船体規模に似合わない充実した兵装を備えています。初期建造艦はエグゾセ艦対艦ミサイル（MM38）を2発、後期建造艦は4発（MM40）を搭載しています。また、550mm魚雷発射管2基（再装填機構なし）、そしてMle.68 100mm単装速射砲（のちにCADAM改修）も搭載されています。対空・対水上レーダーとしてDRBV-51トリトン（Cバンド2次元レーダー）を搭載し、Vega戦術情報処理装置と連携します。長射程のエグゾセMM40を搭載した艦艇には、リンク11対応のOPSMER指揮支援システムも搭載されています。1980年代末の近代化改装では、AMBL-1A 34連装デコイ発射機、AN/SLQ-25対魚雷デコイが追加され、550mm魚雷発射管に対潜攻撃能力が付与されました。一部艦艇には、ミストラル近接防空ミサイルのSIMBAD連装発射機も搭載されています。就役当初は375mm対潜ロケット6連装発射機を搭載していましたが、改装に伴い撤去されています。

運用史

冷戦期には、大西洋を中心に展開し、沿海域での対潜哨戒や海外領土のパトロール任務に用いられました。現在では、国際平和活動や海上治安活動など、戦争以外の軍事作戦にも広く用いられています。ラファイエット級フリゲートの配備により、一部艦艇は退役し、そのうちの6隻はトルコ海軍に売却されました。残りの艦艇についても、FREMM計画艦による更新が予定されていましたが、計画の縮小に伴い、その未来は不透明です。アルゼンチン海軍に輸出された艦艇は、元々は南アフリカ海軍向けであったものの、国連安保理決議418号による制裁措置のため輸出が差し止められ、アルゼンチンが購入したものです。

まとめ

デスティエンヌ・ドルヴ級通報艦は、フランス海軍の海外領土防衛や国際的な任務に長年貢献した艦艇です。小型ながら強力な兵装と航続能力を備え、様々な任務に対応できる汎用性の高い艦艇として、その設計思想は現代の艦艇開発においても参考となるでしょう。退役艦の一部は他国海軍で運用を続け、その活躍は今後も続くものと期待されます。

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