デストロイド

デストロイド：『マクロス』シリーズを彩る陸戦兵器

デストロイドは、1982年のテレビアニメ『超時空要塞マクロス』から始まる「マクロスシリーズ」に登場する架空の兵器群です。「Destroy（破壊）」と「Android（人型ロボット）」を組み合わせた造語で、陸戦用の二足歩行ロボットの兵器体系を指します。

概要

『超時空要塞マクロス』において、デストロイドは地球側のメカとして初めて登場しました。作品世界のメカはオーバーテクノロジー（OTM）を用いた現代兵器の進化形であり、ロボット兵器は航空機系の可変戦闘機（ヴァリアブル・ファイター）と陸上機系のデストロイドに大別されます。

可変戦闘機とデストロイドはどちらも脚部を持ち二足歩行しますが、デストロイドには顔のようなパーツがなく、両腕には砲塔やミサイルポッドが装備されています。カラーリングもカーキ色やオリーブドラブといった落ち着いた色が多く、戦車のような陸戦兵器としてデザインされています。

サブメカとしての役割が多いデストロイドは、主役機の可変戦闘機バルキリーが活躍する空中戦の傍らで、「機動性の劣るやられメカ」として描かれることもあります。しかし、徹底したミリタリー意匠や、細身でしなやかなバルキリーに対し、重厚なデザインで独特のリアリティー溢れる存在感を放ち、『マクロス』のSF世界観を深めています。

デザインと開発

『超時空要塞マクロス』に登場するデストロイドのデザインは、ほぼすべて宮武一貴が担当しました。デザインや愛称は現存する戦闘車両がモチーフとなっており、例えば、モンスターはM50オントス自走無反動砲、ディフェンダーはゲパルト自走対空砲を参考にしています。

宮武によれば、デストロイドは玩具・プラモデルの商品化を前提としており、当時人気のガンプラが敵側のジオン軍中心だったため、味方（地球側）のラインナップを充実させるため、さまざまなバリエーションが考案されました。

1980年代初期の「リアルロボット」作品においては、コンバットアーマー（『太陽の牙ダグラム』）やアーマードトルーパー（『装甲騎兵ボトムズ』）などとともに、ハードSF指向の「陸戦用量産兵器」というカテゴリーを開拓しました。特にデストロイドが画期的だったのは、戦略思想に基づく「砲撃型」「格闘型」などの機体バリエーションが揃えられていた点です。各々の開発思想も明確にされ、形状・機能なども合理的であり、車台（下半身）を共用し、武器（上半身）を交換するというアイデアは、タカトクトイスの組み替え式玩具「デストロイド・コンバージョンキット」として商品化もされました。

これらのコンセプトは、後の日本国内作品だけでなく、米国のウォーゲームシリーズ『バトルテック』にも影響を与え、海外作品におけるロボット兵器の概念にも多大な影響を与えました。

劇中の設定と活躍

劇中では、1999年に地球に落下した異星人の宇宙船「マクロス」に対抗するため、地球統合政府が設立され、異星人を仮想敵とした兵器開発が進められました。デストロイドは統合陸軍の提案に基づき、宇宙防衛ライン上の惑星・衛星上における拠点直衛兵器として開発が開始されました。

2009年の巨人族ゼントラーディ軍との開戦時には、母艦ダイダロスごと宇宙に連れていかれたデストロイド部隊は、SDF-1マクロスの手薄な対空砲火を補う移動砲台としての任務に従事しました。宇宙空間では、マクロスの強攻戦術ダイダロス・アタックにおいて、物量と火力による威力を発揮し、陸戦用量産兵器に適した戦況で活躍を見せました。

後年は可変戦闘機を中心とした運用体制となり、機動力を欠くデストロイドは相対的に目立たない存在となっていきますが、2040年代には旧型機が土木重機に転用されたり、射撃訓練の標的にされたりします。それでも、対地攻撃用という概念は可変戦闘機の系譜に受け継がれ、可変攻撃機（バリアブル・アタッカー：VA）や可変爆撃機（バリアブル・ボマー：VB）などの亜種として存在感を示しています。

2059年が舞台の『マクロスF』では、軍用デストロイドと作業用デストロイドが登場し、マクロス・クォーターの強攻戦術マクロス・アタックでは、ダイダロス・アタックを彷彿とさせる敵艦内部への一斉射撃を行います。また、主要キャラクターのひとりカナリア・ベルシュタインがVB-6 ケーニッヒモンスターを専用機として運用し、CGアクションならではの豪快かつ重厚な動きを見せました。

多様な機種

デストロイドには、さまざまな機種が存在します。型式番号は「型式名-シリーズ番号-タイプ」を表し、03シリーズまでが試作型、04シリーズの原型MBR-04-Mk.Iの名称「デストロイド」が全体をあらわす総称となりました。系統はおもにビガース社とクラウラー社が共同開発した04シリーズと、センチネンタル社とクランスマン社が共同開発した07シリーズがあります。04シリーズは主機熱核反応エンジンと歩行制御システムを内蔵する下半身を共通プラットフォームとすることで、量産性・運用性の向上やコストダウンを図っています。

代表的な機種としては、重装砲撃型のトマホーク、対空迎撃型のディフェンダー、宇宙用近接防空型のファランクス、近接格闘型のスパルタン、超長距離砲撃型のモンスターなどが挙げられます。これらの機種は、それぞれ異なる役割を担い、戦場での多様なニーズに対応しました。

デストロイドは、『マクロス』シリーズの世界観を彩る重要な要素であり、その重厚なデザインと戦略的なバリエーションは、多くのファンを魅了し続けています。

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