M50オントス自走無反動砲

M50 オントス：6連装無反動砲を搭載したアメリカ海兵隊の自走対戦車車両

M50 オントスは、1950年代にアメリカ海兵隊向けに開発された自走無反動砲です。6門のM40 106mm無反動砲を搭載している点が最大の特徴で、対戦車車両として期待されました。「オントス」という愛称は、ギリシャ語で「物事・事象」を意味します。陸上自衛隊の60式自走106mm無反動砲と類似したコンセプトの車両と言えるでしょう。

概要

M50 オントスは装軌式車両で、車体前部左側に操縦席、右側に機関室が配置されています。車体中央部には小型の砲塔が搭載され、その外側左右に3連装の無反動砲が固定装備されています。各無反動砲には、照準用の12.7mmスポッティングライフルが2丁ずつ装備されています。

砲塔は、俯角10度、仰角20度、左右に40度ずつの旋回が可能です。ただし、これらの操作はすべて手動で行われます。砲塔には副武装としてM1919A4機関銃も搭載されています。砲手用のペリスコープが備えられており、車内からの射撃も可能ですが、再装填は車外で行う必要があります。砲塔の下は戦闘区画となっており、18発の砲弾が収納されています。車体後部には観音開きのドアが設けられています。

M50は1969年に全車両が退役しました。対戦車任務は、地上では対戦車ミサイルや個人携行型対戦車ロケットが主流となり、対地攻撃機や対戦車ヘリコプターが発達したことで、この種の対戦車車両の存在意義が薄れたため、後継となる兵器は開発されませんでした。

開発経緯

1951年、アメリカ陸軍は汎用シャーシを用いて、低価格で多様な軽量装甲車両を開発する計画を立案しました。この計画に基づいて、装甲兵員輸送車や自走無反動砲など、様々なバリエーションが計画・試作されました。最終的に、M40 106mm無反動砲を6門搭載したT165試作車が残りました。

その後、改良型のT165E1が24両発注され、そのうち10両に更なる改良が加えられてT165E2となりました。1955年、T165E2はM50として正式採用されましたが、陸軍は採用を見送り、途中から試験に参加していた海兵隊が採用することになりました。M50 オントスは、1957年11月までに297両が生産されました。

実戦での運用

M50は、ベトナム戦争に投入されました。ベトナムでは、フレシェット弾を使用して主に対歩兵戦闘で威力を発揮しました。しかし、車外でしか弾薬を再装填できないという点が大きな欠点でした。また、バックブラスト（後方爆風）が大きいことや、整備性の悪さなども問題点として指摘されました。

改良

M50の最大の欠点である無反動砲の再装填を容易にするため、リボルバーのような機構を用いる改良案が考案されましたが、実現には至りませんでした。

1963年から1965年の間に、176両のM50はエンジンをゼネラルモーターズ製の6気筒エンジンから、クライスラーHT361-318 V型8気筒エンジンに換装されました。このエンジン換装後の車両はM50A1と呼ばれます。

関連項目

無反動砲
対戦車車両
* 60式自走106mm無反動砲

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