ゲパルト自走対空砲

ゲパルト (Gepard)

ゲパルト（Gepard）は、ドイツ語でチーターを意味する、西ドイツで開発・製造された自走式対空砲です。「対空戦車」を意味するFlakpanzerとも呼ばれます。

M42ダスター自走高射機関砲の後継として1965年に開発が始まり、1973年から西ドイツ陸軍に配備されました。西ドイツには約400両が配備されたほか、オランダやベルギーにも輸出されました。オランダ型は当初「チーター」と呼ばれていましたが、後に「シーザー」に変更されています。

構造と特徴

レオパルト1主力戦車の車台に、スイスのエリコン社製35mm対空機関砲KDA1基と発煙弾発射機4基（両側面）を装備した砲塔を搭載しています。砲塔後上部にはレーザー測距機付きKuバンド捜索レーダー（距離15km）、砲塔前面にはSバンド追尾レーダー（距離15km）を備え、追尾レーダーで目標を追尾しながら、捜索レーダーで他の目標を探すことが可能です。射撃管制装置は当初アナログ式コンピュータでしたが、近代化改修によりデジタル式コンピュータに変更され、対空射撃の精度が向上しました。

2000年代以降、携行式対空ミサイルや砲塔を搭載した歩兵機動車が普及し、自走式対空砲の重要性は低下しましたが、2020年代以降は、低速ドローンや巡航ミサイルの迎撃対策として再び注目されています。2022年のロシアによるウクライナ侵攻では、ウクライナがドイツに対し、ドローン対策としてゲパルトの供与を要請しました。

2022年7月よりウクライナ軍に供与された車両は、ロシア軍のドローンや巡航ミサイルの迎撃で実際に戦果を挙げています。

オランダ軍仕様は、捜索レーダーがX/Kaバンド（距離13km）の長方形型、追尾レーダーがXバンド（距離15km）の自国製に変更され、砲塔側面の煙幕弾発射機も片側6基に増えています。

性能が向上した攻撃ヘリコプターの対戦車ミサイル攻撃に対抗するため、ゲパルトの右側35mm機関砲側面に2発のFIM-92 スティンガー地対空ミサイルを取り付けて運用できるハイブリッドシステムも開発されています。

レーダー配置などには特許があり、日本の87式自走高射機関砲は、この特許に抵触しないよう設計されています。

運用と戦歴

2023年現在、実戦で使用されたのは、2022年からのロシアのウクライナ侵攻に際してウクライナ軍に譲渡されたドイツ連邦軍の退役車両のみです。低速で飛来するドローンを迎撃する動画も公開されています。ウクライナ軍統合軍司令官セルヒイ・ナエフ中将は、ロシア軍による首都キーウを狙った自爆ドローン攻撃に対し、ゲパルト自走対空砲が目覚ましい活躍を見せていると評価しています。

運用国

現在
ブラジル：ドイツ連邦軍から余剰分の36両の供与を受けた。
ヨルダン：退役したオランダの余剰機から60両を2,100万USドルで譲り受けた。
カタール：2020年12月、ゲパルト自走対空砲計15両の輸出ライセンスが発行された。2022 FIFAワールドカップ期間中のテロリストによるドローン攻撃の可能性に対抗するため、ゲパルトを使用する計画である。2023年時点で15両を保有。
ルーマニア: 43両（36両＋予備機7両）を納入。
ウクライナ：2022年4月26日、ドイツ政府はゲパルト自走対空砲50両をウクライナに譲渡する権限を付与、同年7月から引き渡しが開始。
過去
ドイツ：元々ドイツ連邦軍向けに377両製造、その内94両が2010年まで使用された。現在はヴィーゼル２に置き換わるまで保管。
ベルギー：55台納入、退役済み。
チリ：2008年に4台納入され、2011年1月に返還。オーバーホール・アップグレード費用高騰のため、30台の発注がキャンセルされた。
オランダ：95台納入、2006年までに退役し、保管中。

登場作品

映画
『FUTURE WAR 198X年』：レオパルト2と共にワルシャワ条約機構軍の攻撃機を撃墜する。
ゲーム
『エースコンバット7』：オーシア国防陸軍が運用。
『War Thunder』：ドイツ陸軍ツリーのランク6に対空車輌として登場。
* 『メタルマックス2』：タイシャーの神社に、戦神様として祭られている。主人公が入手し乗ることも可能。

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