デマラトス
スパルタのエウリュポン朝に属する王デマラトスは、紀元前515年から紀元前491年までその治世にありました。彼は先代の王アリストンの子として王位を継承しましたが、その治世は、もう一人の共同統治者であるアギス朝の王クレオメネス1世との絶え間ない対立によって特徴づけられました。歴史家ヘロドトスは、この確執の根源がクレオメネスのデマラトスに対する嫉妬にあったと述べています。
デマラトスとクレオメネスの対立は、スパルタの対外政策にも影響を及ぼしました。
アテナイへの干渉の阻止: 紀元前6世紀末、アテナイが僭主制から解放されて国力を増強させると、クレオメネスはこれを危険視し、アテナイの力を削ぐために再び僭主制を導入しようと画策しました。彼はアテナイの政治家イサゴラスを新たな権力者とするべくアッティカへ侵攻しましたが、戦闘開始直前、デマラトスは自身の率いる部隊と共に戦場から撤退。この行動により、クレオメネスによるアテナイ干渉の試みは失敗に終わりました。
アイギナ問題への関与: 紀元前492年、アテナイの向かいに位置する島国アイギナがペルシアに臣従する姿勢を見せました。これに対し、アテナイはスパルタに制裁措置を求め、クレオメネスはアイギナ島の首謀者逮捕のために渡海しました。しかし、アイギナ側は、スパルタの二人の王が共に来ない限りは応じられないと主張し、クレオメネスの目的は達成されませんでした。この時、アイギナ側がそのような態度をとるよう仕向けたのは、デマラトスであったと伝えられています。
度重なるデマラトスの妨害に憤ったクレオメネスは、デマラトスを王位から追放する計画を実行に移します。彼は、かつてデマラトスに婚約者を奪われて恨みを抱いていた同族の王族レオテュキデスと組んで陰謀を巡らせました。その口実として使われたのは、デマラトスが実はアリストンの実子ではなく、母が前夫との間にもうけた子ではないかという出自に関する疑惑でした。クレオメネスは権威あるデルフォイの神託所を金銭で買収し、自身の意向に沿う予言を引き出しました。この偽りの神託に従い、デマラトスは紀元前491年に廃位され、代わりにレオテュキデスが新たな王として即位しました。デマラトス失脚後、クレオメネスはレオテュキデスと共に再びアイギナ島へ向かい、島の有力者たちを捕縛してアテナイに人質として引き渡しました。
王位を追われたデマラトスは、しばらくスパルタに留まり、ある官職に就いてギュムノパイディアイの祭に参加したことが記録されています。この時、自らの出自について深く悩んだ彼は母に真の父親は誰かと問い、アリストンに化けて通じた英雄アストラバコスがそうであると聞かされたという有名な逸話が残されています。
その後、デマラトスはスパルタを出奔し、当時の強大なペルシア帝国の王ダレイオス1世のもとへ亡命しました。ダレイオス王はデマラトスを温かく迎え入れ、彼にペルガモンやその他のいくつかの都市を与えました。歴史家クセノポンは、デマラトスの子孫が紀元前4世紀初頭までこれらの地を支配していたことを記しています。
ペルシアに亡命してからのデマラトスは、ペルシア王の信頼できる相談役として重要な役割を果たしました。ダレイオス1世が後継者を選ぶ際に悩んでいた際、デマラトスは、スパルタの慣習を引き合いに出しつつ、王位に就いた後に生まれた子であるクセルクセスを推すようクセルクセス本人に入れ知恵をしました。この助言を受け入れたダレイオスは、クセルクセスを次期王に指名しました。
紀元前480年にクセルクセス1世が大軍を率いてギリシアへの遠征（第二次ペルシア戦争）を開始した際、デマラトスもこれに同行しました。ギリシア本土への進撃に先立ち、クセルクセスがスパルタ軍の戦力について尋ねた時、デマラトスはスパルタ人がいかに勇敢で、いかなる敵に対しても最後まで戦い抜く存在であるかを力説し、スパルタ人を決して侮るべきではないと忠告しました。この時、クセルクセスはこの警告を真剣に受け止めませんでしたが、テルモピュライの戦いでスパルタ軍の頑強な抵抗に直面し、多大な犠牲を払った末にようやく勝利を得たことで、デマラトスの言葉が正しかったことを痛感しました。テルモピュライでの戦いの後、クセルクセスはデマラトスにスパルタを攻略するための具体的な策を求めました。デマラトスは、スパルタから目と鼻の先にあるキュテラ島に艦隊の一部を派遣して占領し、そこを拠点にスパルタ本土を脅かす戦略を提案しました。しかし、この進言は、ペルシア艦隊の指揮官であったクセルクセスの弟アカイメネスの反対により採用されませんでした。周知の通り、このペルシアの大遠征は最終的に失敗に終わりました。
政治的キャリアや亡命生活の他にも、デマラトスは個人的な栄誉も得ています。彼はペルシアに亡命する以前に、古代ギリシアで最も権威ある祭典の一つであったオリュンピア祭において、四頭立ての戦車競争で優勝した経験を持っています。
デマラトスの生涯は、スパルタ王家の権力闘争、ギリシア都市国家間の外交、そして迫り来るペルシア帝国の脅威といった、当時のギリシア世界が直面していた複雑な状況を映し出しています。彼の亡命後の活動は、ペルシア側から見たギリシア世界の情報源としても貴重であり、後世の歴史家たちによって詳細に記録されています。
治世中の出来事
デマラトスとクレオメネスの対立は、スパルタの対外政策にも影響を及ぼしました。
アテナイへの干渉の阻止: 紀元前6世紀末、アテナイが僭主制から解放されて国力を増強させると、クレオメネスはこれを危険視し、アテナイの力を削ぐために再び僭主制を導入しようと画策しました。彼はアテナイの政治家イサゴラスを新たな権力者とするべくアッティカへ侵攻しましたが、戦闘開始直前、デマラトスは自身の率いる部隊と共に戦場から撤退。この行動により、クレオメネスによるアテナイ干渉の試みは失敗に終わりました。
アイギナ問題への関与: 紀元前492年、アテナイの向かいに位置する島国アイギナがペルシアに臣従する姿勢を見せました。これに対し、アテナイはスパルタに制裁措置を求め、クレオメネスはアイギナ島の首謀者逮捕のために渡海しました。しかし、アイギナ側は、スパルタの二人の王が共に来ない限りは応じられないと主張し、クレオメネスの目的は達成されませんでした。この時、アイギナ側がそのような態度をとるよう仕向けたのは、デマラトスであったと伝えられています。
廃位と亡命
度重なるデマラトスの妨害に憤ったクレオメネスは、デマラトスを王位から追放する計画を実行に移します。彼は、かつてデマラトスに婚約者を奪われて恨みを抱いていた同族の王族レオテュキデスと組んで陰謀を巡らせました。その口実として使われたのは、デマラトスが実はアリストンの実子ではなく、母が前夫との間にもうけた子ではないかという出自に関する疑惑でした。クレオメネスは権威あるデルフォイの神託所を金銭で買収し、自身の意向に沿う予言を引き出しました。この偽りの神託に従い、デマラトスは紀元前491年に廃位され、代わりにレオテュキデスが新たな王として即位しました。デマラトス失脚後、クレオメネスはレオテュキデスと共に再びアイギナ島へ向かい、島の有力者たちを捕縛してアテナイに人質として引き渡しました。
王位を追われたデマラトスは、しばらくスパルタに留まり、ある官職に就いてギュムノパイディアイの祭に参加したことが記録されています。この時、自らの出自について深く悩んだ彼は母に真の父親は誰かと問い、アリストンに化けて通じた英雄アストラバコスがそうであると聞かされたという有名な逸話が残されています。
その後、デマラトスはスパルタを出奔し、当時の強大なペルシア帝国の王ダレイオス1世のもとへ亡命しました。ダレイオス王はデマラトスを温かく迎え入れ、彼にペルガモンやその他のいくつかの都市を与えました。歴史家クセノポンは、デマラトスの子孫が紀元前4世紀初頭までこれらの地を支配していたことを記しています。
ペルシアでの活動
ペルシアに亡命してからのデマラトスは、ペルシア王の信頼できる相談役として重要な役割を果たしました。ダレイオス1世が後継者を選ぶ際に悩んでいた際、デマラトスは、スパルタの慣習を引き合いに出しつつ、王位に就いた後に生まれた子であるクセルクセスを推すようクセルクセス本人に入れ知恵をしました。この助言を受け入れたダレイオスは、クセルクセスを次期王に指名しました。
紀元前480年にクセルクセス1世が大軍を率いてギリシアへの遠征（第二次ペルシア戦争）を開始した際、デマラトスもこれに同行しました。ギリシア本土への進撃に先立ち、クセルクセスがスパルタ軍の戦力について尋ねた時、デマラトスはスパルタ人がいかに勇敢で、いかなる敵に対しても最後まで戦い抜く存在であるかを力説し、スパルタ人を決して侮るべきではないと忠告しました。この時、クセルクセスはこの警告を真剣に受け止めませんでしたが、テルモピュライの戦いでスパルタ軍の頑強な抵抗に直面し、多大な犠牲を払った末にようやく勝利を得たことで、デマラトスの言葉が正しかったことを痛感しました。テルモピュライでの戦いの後、クセルクセスはデマラトスにスパルタを攻略するための具体的な策を求めました。デマラトスは、スパルタから目と鼻の先にあるキュテラ島に艦隊の一部を派遣して占領し、そこを拠点にスパルタ本土を脅かす戦略を提案しました。しかし、この進言は、ペルシア艦隊の指揮官であったクセルクセスの弟アカイメネスの反対により採用されませんでした。周知の通り、このペルシアの大遠征は最終的に失敗に終わりました。
その他の業績
政治的キャリアや亡命生活の他にも、デマラトスは個人的な栄誉も得ています。彼はペルシアに亡命する以前に、古代ギリシアで最も権威ある祭典の一つであったオリュンピア祭において、四頭立ての戦車競争で優勝した経験を持っています。
デマラトスの生涯は、スパルタ王家の権力闘争、ギリシア都市国家間の外交、そして迫り来るペルシア帝国の脅威といった、当時のギリシア世界が直面していた複雑な状況を映し出しています。彼の亡命後の活動は、ペルシア側から見たギリシア世界の情報源としても貴重であり、後世の歴史家たちによって詳細に記録されています。
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