デューセンバーグ

デューセンバーグ：アメリカが誇る伝説の高級車

デューセンバーグは、1910年から1937年にかけて存在したアメリカの高級車メーカーです。フレッドとオーガストのデューセンバーグ兄弟が、ミネソタ州セントポールで1913年に設立しました。ドイツからの移民の息子であった兄弟は、独学で自動車設計技術を習得。実験的な機構を備えた高性能車を次々と世に送り出し、自動車業界に革命を起こす存在となりました。

輝かしい戦績と技術革新

デューセンバーグは、モータースポーツでも成功を収めました。エディ・リッケンバッカーをドライバーに1914年のインディ500に初参戦。その後、1924年、1925年、1927年とインディ500で優勝を果たし、その実力を世界に知らしめました。1923年には、インディ500のセーフティカーにも選ばれています。さらに、1921年にはル・マン24時間レースでアメリカ勢初の優勝を達成。この輝かしい戦績は、デューセンバーグの卓越した技術力の証です。

第一次世界大戦前にはニュージャージー州エリザベスに移転し、アメリカ合衆国政府と練習機用エンジンの納入契約を締結しました。大戦中はフランスのブガッティ社が開発した高性能航空エンジンの国産化という難題にも挑戦。見事成功させましたが、終戦により生産はわずか40基に留まりました。

1922年にはインディアナポリスに移転し、革新的な技術を搭載した『モデルA』を発表。直列8気筒SOHCエンジンや世界初の油圧ブレーキを採用するなど、先進的な技術を導入しました。しかし、『モデルA』は高価格帯だったこともあり、十分な販売実績は上げられませんでした。

モデルJ：伝説の高級車の誕生

1926年、デューセンバーグはコード社に買収されます。コード傘下で開発されたのが、伝説的な高級車『モデルJ』です。当時としては革新的なDOHCエンジンを搭載し、7リットルの大排気量から265馬力を発生。最高時速192kmを誇るその走りは、まさに圧巻でした。停止状態から時速160kmに達するまでわずか21秒という驚異的な加速力も持ち合わせていました。

『モデルJ』は、その豪華さから「狂乱の20年代」を象徴する車として知られています。クラーク・ゲーブルやゲイリー・クーパーといったハリウッドスターをはじめ、多くの著名人が愛車として愛用しました。シャーシのみを販売し、顧客が希望するボディをコーチビルダーに製作させるという、オーダーメイド方式を採用。そのため、世界に2台として同じデューセンバーグは存在しませんでした。

『モデルJ』の価格は、シャーシだけで8500ドル（現在の10万ドル相当）と非常に高価でした。ボディを含めると2万ドル近くになり、当時の大衆車フォード・モデルAの価格（500ドル）と比較すると、その桁違いの高さが分かります。

1932年には、スーパーチャージャーを搭載した『モデルSJ』が発売されました。最高出力は320馬力、最高時速は208kmにまで向上しました。しかし、オーナーであるエレット・ロバン・コードの破産により、デューセンバーグは1937年にその歴史に幕を閉じました。

幾度となく繰り返された復活への試み

デューセンバーグの倒産後も、その名声から復活への試みが繰り返されました。オーガスト・デューセンバーグによる燃料噴射装置搭載車計画や、フレッド・デューセンバーグの息子、フリッツ・デューセンバーグを中心とした復活プロジェクトなどがありましたが、いずれも実現には至りませんでした。2007年の発売を目指したプロジェクトも、リーマン・ショックの影響で頓挫。

しかし、デューセンバーグの車は今もなお、ヴィンテージカーの象徴として、高い人気を保ち続けています。オークションなどで出品された場合、状態の良いものは100万ドルを超える高値で取引されることも珍しくありません。

デューセンバーグは、革新的な技術と洗練されたデザイン、そして華々しい歴史を持つ、まさに伝説的な高級車メーカーと言えるでしょう。

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