デラ台風

デラ台風（1949年）

デラ台風は、1949年6月に発生し、九州地方を中心に甚大な被害をもたらした台風です。国際名「デラ/Della」としても知られています。この台風は、特に船舶に大きな被害を与えたことで記録されています。

台風の経路と概要

1949年6月17日、フィリピン東方沖で米軍機によって発見された台風2号は、南西諸島に沿って北東に進みました。6月20日には沖縄、奄美大島、屋久島を通過し、その後進路を北に変え、6月23日には鹿児島県鹿児島市付近を通過しました。その後、九州を北上し、対馬海峡を経て朝鮮半島東方で停滞し、温帯低気圧へと変わりました。

台風接近前から梅雨前線の活動が活発化しており、九州、四国、近畿、東海地方の一部では、1日に200mmを超える大雨となりました。特に愛媛県では、宇和島市で29.2m/s、佐田岬で38.5m/sの最大瞬間風速を観測しました。被害は九州から東北地方にかけて広範囲に及びましたが、特に台風が上陸した鹿児島県で大きな被害が出ました。

宇和海では多数の漁船が遭難し、門司・高浜航路の旅客船「青葉丸」が周防灘で沈没するなど、多くの犠牲者が出ました。

被害状況

デラ台風による人的被害は、死者252人、行方不明者216人、負傷者367人に及びました。住家被害も甚大で、全壊1,410棟、半壊4,005棟、床上浸水4,627棟、床下浸水52,926棟が確認されています。

宇和海での漁民の遭難

宇和海では、操業中の漁民が多数犠牲になりました。死者・行方不明者は211人に達しました（1949年7月10日時点）。

日振島での被害と補償

特に被害が大きかったのは日振島（現在の愛媛県宇和島市）で、当時の人口約2,300人のうち106人もの死者・行方不明者が出ました。当時、日振島には電気が通っておらず、気象特報が伝わる前に漁に出ていたことが被害を拡大させました。

この台風では、廃業・倒産した網主を除き、100名の死亡・行方不明者の遺族に対し、6万〜10万円の補償金が支払われました。戦後間もない時期に、このような円滑な補償が行われたのは異例でした。その背景には、以下の要因があったと考えられています。

役場に法律の知識に詳しい官吏がいた。
遺族会の結成が円滑に行われた。
使用者側に復興資金が供与された。
使用者側の補償に対する理解が得られた。

その後、日振島ではデラ台風の三回忌に死者を供養する盆踊りの口説が作られ、十三回忌には沖の島に遭難者の名前を刻んだ慰霊塔が建設されました。

青葉丸転覆事故

今治港と門司港を結ぶ川崎汽船の旅客船「青葉丸」（599トン）は、警報を受けていたにもかかわらず、6月20日21時に高浜港を出航しました。しかし、6月21日2時半頃、大分県姫島付近で転覆し、乗員44人と乗客91人のほとんどが死亡または行方不明となりました。救助されたのはわずか5人でした。

被害が拡大した理由

デラ台風の被害が拡大した背景には、以下の要因が挙げられます。

台風の進路が急に変わったこと。
離島や僻地における台風情報伝達システムの未整備。
梅雨時には台風が来ないという言い伝えが信じられていたことによる警戒心の欠如。

これらの要因が複合的に重なり、甚大な被害につながったと考えられます。

関連情報

書籍: 『日振島の昭和史』（著：田中皓正、発行：1997年7月、ISBN 978-4-944068-15-9）
* 外部リンク: 災害をもたらした気象事例（デラ台風） - 気象庁

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