デルマトーム

デルマトームの理解

概要

デルマトームとは、各脊髄神経の後根から発する神経線維が皮膚感覚を支配する区域のことを指します。具体的には、8本の頚神経（ただしC1は該当なし）、12本の胸神経、5本の腰神経、及び5本の仙骨神経が関連しています。これらの神経は特定の皮膚部位から脳に感覚、特に痛みの情報を伝えます。また、この用語は胚発生過程における体節を指すこともあります。

人間の胸部と腹部には、円盤状に重なったデルマトームが存在し、それぞれ異なる脊髄神経によって支配されています。一方、四肢のデルマトームは縦に走る特別なパターンを持っており、一般的な配置はほぼ全ての人において同じですが、実際の神経支配範囲は指紋のように個々に異なります。このように、デルマトームは皮膚の感覚区域と脊髄神経の密接な関係を示しています。

語源

「デルマトーム」という用語は、古代ギリシャ語の「δέρμα」（皮膚）と「τέμνω」（切る）に由来しています。この言葉が示すように、デルマトームは皮膚の感覚構造に深い関係を持っています。

臨床的意義

デルマトームは、脊髄神経からの感覚ニューロンによって支配される皮膚の領域を示しています。特定のデルマトームに沿った症状、たとえば痛みや発疹が現れる場合、関連する神経根に問題が生じている可能性が高くなります。これには脊椎の機能的な障害やウイルス感染などが含まれ、それにより皮膚疾患がデルマトームの方向に沿って発生することがよくあります。

関連痛

関連痛という現象もデルマトームに密接に関連します。感覚神経線維が心臓の内臓からの信号と同じ脊髄レベルで結びつく場合、内臓からの痛みを感じる部位が体表から来ていると誤認されることがあります。結果として、左腕や顎の痛みが生じることがあります。これは、痛みの信号が同じ脊髄分節においているために発生する原理です。また、水痘や帯状疱疹ウイルスが神経節に潜伏している場合、デルマトームに沿った痛みや発疹が引き起こされることが一般的です。

重要なデルマトームと解剖学的参考

ここでは各脊髄神経とその支配する皮膚領域の重要な指標を示します。

頸神経

• - C2: 外後頭隆起の外側1cm以上、または耳の後ろ3cm以上。
• - C3: 鎖骨上窩、鎖骨中線のあたり。
• - C4: 肩鎖関節の上。
• - C5: 肘の近位、肘前窩の外側部。
• - C6: 親指の近位指骨の背側。
• - C7: 中指の近位指骨の背側。
• - C8: 小指の近位指骨の背側。

胸神経

• - T1: 上腕骨内側上顆近く。
• - T2: 腋窩の頂点。
• - T3: 鎖骨中線と第3肋間の交点。
• - T4: 鎖骨中線と第4肋間の交点（乳首の高さ）。
• - T5: 鎖骨中線と第5肋間の交点（乳首と剣状突起の中間）。
• - T6: 剣状突起の高さと同水平の交点。
• - T7-T11: 臍の高さと鼠径靭帯間の交点。

腰神経

• - L1: T12とL2の間。
• - L2: 大腿前内側の中点。
• - L3: 大腿骨内側上顆。
• - L4: 内果。
• - L5: 第3中足趾節関節の足背。

仙骨神経

• - S1: 踵骨の外側。
• - S2: 膝窩の中点。
• - S3: 坐骨結節。
• - S4/S5: 肛門周辺。

顔面神経

顔面の感覚は三叉神経により支配され、以下の脳神経が含まれます。

• - V1: 眼神経。
• - V2: 上顎神経。
• - V3: 下顎神経。これらの神経は、皮膚の感覚を処理し、痛みや感覚異常の評価に役立ちます。

関連項目

• - 皮膚の神経支配
• - 背根
• - 末梢神経フィールド

これらの知識は、医療従事者が症状の診断や治療において非常に重要です。デルマトームの理解を深めることで、患者の症状に応じた適切な対応が可能になります。

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