デヴィッド・クロス (ミュージシャン)

イングランド出身の音楽家、デヴィッド・クロスは、1949年4月23日にプリマスで生を受けました。彼はヴァイオリンをはじめとする弦楽器を中心に演奏するが、メロトロン、ピアノ、フルートといった多様な楽器も操る多才なプレイヤーです。そのキャリアを通じて、特に1970年代の革新的なプログレッシブ・ロック・バンド、キング・クリムゾンのメンバーとして活動したことで、その名が広く知られています。また、教育者としての一面も持ち、ロンドン・メトロポリタン大学で音楽講師として教鞭を執っています。

プリマスの地元の学校でヴァイオリンを習い始めたクロスは、エクセターのカレッジに進学後、音楽と演劇という二つの分野を深く学びました。音楽家としての活動は1969年、フォーク・ロック・トリオ「ザ・リング」への参加から始まります。

彼のキャリアにおける最も重要な時期の一つは、1972年にキング・クリムゾンに加入したことです。創設メンバーであるギタリスト、ロバート・フリップとの度重なるジャム・セッションを経て、新生キング・クリムゾンの主要メンバーとなりました。ヴァイオリン奏者として、それまでのロックにはあまり見られなかったクラシカルかつ実験的なサウンドをバンドにもたらしました。彼は特に、バンドの過渡期を象徴するアルバム『太陽と戦慄』（1973年）と『暗黒の世界』（1974年）の制作に大きく貢献しています。しかし、1974年7月のアメリカ・ツアー終了をもって、彼はバンドを離れることとなります。

キング・クリムゾン脱退後、クロスは自身の音楽探求を続け、様々なバンド活動に参加しながら、ソロ・アーティストとしても作品を発表していきます。1999年頃には、自身の音楽を発信する場として「Noisy Records」レーベルを設立し、活動の幅を広げました。そして2004年からは、自身のリーダー・バンドである「デヴィッド・クロス・バンド」を率いて、現在まで精力的な活動を展開しています。

近年もその音楽性は衰えることなく、2015年にはかつての盟友ロバート・フリップとのコラボレーション作品『スターレス・スターライト』を発表し、往年のファンを喜ばせました。同年4月には来日公演も行い、日本の音楽ファンとの交流を深めています。また、音楽業界への貢献は演奏活動にとどまらず、2016年8月にはディスクユニオンの店舗で一日店長を務めるなど、多角的な活動を見せています。

デヴィッド・クロスはその長いキャリアを通じて、ヴァイオリニストとしてプログレッシブ・ロック界に独自の地位を築き上げてきました。キング・クリムゾンでの革新的なプレイから、ソロや自身のバンドでの実験的なサウンドまで、常に進化を続ける姿勢は多くのミュージシャンに影響を与えています。音楽教育者としての貢献も含め、彼の活動は多岐にわたります。

主なディスコグラフィは以下の通りです。

キング・クリムゾン
『太陽と戦慄』 - Larks' Tongues in Aspic (1973年)
『暗黒の世界』 - Starless and Bible Black (1974年)
『レッド』 - Red (1974年) ※演奏参加曲あり
『USA』 - USA (1975年) ※ライブアルバム
『グレイト・ディシーバー - ライブ1973-1974』 - The Great Deceiver (1992年) ※ライブ編集盤

デヴィッド・クロス & ロバート・フリップ
『スターレス・スターライト』 - Starless Starlight (2015年)

ソロ ／ デヴィッド・クロス・バンド
『備忘録』 - Memos from Purgatory (1989年)
『破滅への試行』 - Testing to Destruction (1994年)
『クローサー・ザン・スキン』 - Closer Than Skin (2005年)
『サイン・オブ・ザ・クロウ』 - Sign of the Crow (2016年) ※デヴィッド・クロス・バンド名義

主なコラボレーション
クリアライト : 『フォーエヴァー・ブロウイング・バブルズ』 - Forever Blowing Bubbles (1975年)
久石譲 : 『地上の楽園』 - Chijou no Rakuen (1994年)
* デヴィッド・クロス & デヴィッド・ジャクソン : 『アナザー・デイ』 - Another Day (2018年)

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