デヴィッド・ブルース

サー・デヴィッド・ブルース：マルタ熱とアフリカ睡眠病研究のパイオニア

サー・デヴィッド・ブルース(1855-1931)は、[スコットランド]]出身の病理学者・微生物学者であり、イギリス陸軍軍医監として輝かしい功績を残しました。彼の名は、マルタ熱とアフリカ睡眠病の研究に深く結びついており、それぞれの病原体であるブルセラ菌(Brucella melitensis)とブルース氏[[トリパノソーマ]は、彼の功績を称えて命名されています。

生涯と初期の研究

1855年、オーストラリアのメルボルンで生まれたブルースは、幼少期をオーストラリアとスコットランドで過ごしました。エディンバラ大学で医学を学び、1881年に卒業。その後、一般開業医を経て、陸軍軍医学校に入学しました。1883年には、生涯のパートナーとなるMary Elizabeth Steeleと結婚。Maryは優れた画才を持ち、ブルースの研究において顕微鏡画像の精密な描画を通して重要な貢献をしました。

マルタ熱の病原体解明

1884年、ブルースはマルタ島に駐在。当時、兵士の間で流行していたマルタ熱の原因究明に挑みました。この病気は、周期的な高熱発作を特徴とし、当時、汚染された水や衛生状態の悪さが原因と考えられていました。

限られた設備の中で、ブルースは徹底的な調査を行いました。患者の検体から微生物を培養し、動物実験を通して、マルタ熱の原因が球状桿菌であることを突き止めました。彼はこの菌をMicrococcus melitensisと命名しましたが、後にBrucella melitensisと改名され、現在ではブルセラ症として知られています。さらに、ヤギ乳が主な感染源であることも解明しました。

ナガナの研究：ツェツェバエとトリパノソーマ

1894年、ブルースは南アフリカのナタール・ズールーランドに派遣され、家畜の病気であるナガナの研究を行いました。当時、ツェツェバエが毒を持つという説や、野生動物との関連が疑われていました。

Ubomboという隔絶された地域を拠点に研究を進めたブルースは、罹患動物の血液中からトリパノソーマを発見。ツェツェバエに刺された犬がナガナを発病することを確認し、ツェツェバエがナガナの病原体であるトリパノソーマを媒介することを実証しました。この発見は、アフリカトリパノソーマ症研究の礎を築いた偉大な業績です。研究期間中には、移動困難や研究の中断など多くの困難に直面しましたが、ブルースは粘り強く研究を続けました。

アフリカ睡眠病の解明

1903年、ブルースはウガンダに派遣され、アフリカ睡眠病の調査を行いました。睡眠障害から昏睡状態に陥るこの病気の原因を解明すべく、多くの患者を診察し、カステラーニ医師らと共にトリパノソーマを病原体として特定。ツェツェバエが媒介することを明らかにしました。この研究も、アフリカ睡眠病対策に大きく貢献しました。この発見に関して、カステラーニ医師との間で優先権を巡る論争もありました。

晩年と功績

第一次世界大戦中は、破傷風や塹壕熱の研究を率いました。1919年に陸軍を退役後も、リスター予防医学研究所理事長を務め、研究活動を続けました。1931年、妻の死後まもなく亡くなりました。

ブルースの功績は計り知れません。マルタ熱とアフリカ睡眠病の原因解明、ツェツェバエによる病原体の媒介の解明、これらの発見は、感染症対策の進歩に大きく貢献しました。彼の生涯と業績は、医学史において永遠に語り継がれるべきものです。また、彼の研究は、妻Maryとの献身的な協力によって支えられていたことも特筆に値します。

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