デヴィルズバッグ

デヴィルズバッグ：伝説的名馬の生涯

デヴィルズバッグ (Devil's Bag, 1981年 - 2005年) は、アメリカ合衆国が生んだサラブレッド競走馬にして、優れた種牡馬として名を馳せた伝説的な存在です。2歳時には5戦全勝という輝かしい戦績で、1983年のエクリプス賞最優秀2歳牡馬に輝きました。しかし、3歳シーズンに怪我を負い、惜しまれつつも競走馬としてのキャリアに幕を閉じます。その後は種牡馬として活躍し、多くの優秀な競走馬を輩出しました。

彗星のごとく現れた2歳馬

1981年、メリーランド州のウインドフィールズファームで生まれたデヴィルズバッグ。父は名種牡馬ヘイロー、母はバラッドという血統を受け継いでいました。1歳時には高額で競売落札され、期待を一身に集めながら競走馬としての道を歩み始めます。

2歳シーズン、デヴィルズバッグは圧倒的な強さで5連勝を飾りました。デビュー戦では7馬身半もの大差をつけて圧勝し、関係者はその才能に驚きを隠せませんでした。続くレースでも5馬身以上の圧勝劇を繰り返し、ベルモントパーク競馬場でのカウディンステークスやシャンペンステークスでは、当時のトラックレコードを塗り替える快挙を成し遂げます。その強さは、他の2歳馬を圧倒するものでした。最終戦のローレルフューチュリティでも圧勝し、その年の最優秀2歳牡馬に選出される栄誉に輝きます。セクレタリアト以来最高の2歳馬、セクレタリアトの再来など、その評価は非常に高いものでした。3歳シーズンのクラシック三冠制覇も確実視されていました。

しかし、レムゼンステークスへの出走を前に挫石のため休養に入ったデヴィルズバッグ。その間、なんと1株100万ドル、総額3600万ドルという、当時としては破格の金額で種牡馬シンジケートが結成されます。

挫折と引退、そして種牡馬としての成功

3歳シーズン、デヴィルズバッグはまずフラミンゴプレップステークスを圧勝で飾ります。しかし、続くフラミンゴステークスでは、ハイペースのレース展開に苦しみ、初の敗北を喫してしまいます。この敗北は大きな衝撃を与え、「近年の競馬における、1973年のセクレタリアトのそれ以来の衝撃的な事件であった」と報道されるほどでした。

その後もフォアランナーパースやダービートライアルステークスを圧勝するなど、その能力の高さを示していましたが、ケンタッキーダービーを目前に控えた5月、右前脚の膝に亀裂が見つかり、惜しまれつつも引退することとなってしまいました。

引退後はクレイボーンファームで種牡馬となりました。多くのステークス勝ち馬を輩出し、種牡馬としても成功を収めます。代表産駒として、アメリカで活躍したデヴィルヒズデューや、日本においてマイルチャンピオンシップを連覇し、フランス遠征でも勝利を収めたタイキシャトルなどが挙げられます。その他にも、アイルランドとアメリカで活躍したトワイライトアジェンダ、サンタモニカハンデキャップを制したデヴィルズオーキッド、ガゼルハンデキャップを制したバイザスポーツなど、世界中で活躍する競走馬を輩出しました。彼の血統は、現在でも多くのサラブレッドに受け継がれています。2016年の菊花賞と有馬記念を制したサトノダイヤモンドの母父もデヴィルズバッグです。

静かに幕を閉じる

2005年2月3日、デヴィルズバッグは24歳でこの世を去りました。クレイボーンファームの馬房で右後脚を骨折し、安楽死の処置がとられました。

母系

母であるバラッドは、現役時代は目立った活躍はできませんでしたが、繁殖牝馬としてはデヴィルズバッグを始めとする多くのステークス勝ち馬を輩出した名牝でした。その中でも特にエンジェリックソングは繁殖牝馬としてハリウッドターフカップステークス勝ち馬のスライゴベイや日本でクイーン賞などに勝ったレディバラードなどを輩出しています。

デヴィルズバッグは、その短くも華々しい競走馬生活、そして種牡馬としての成功によって、競馬史に名を残す伝説的名馬となりました。彼の功績は、これからも長く語り継がれていくことでしょう。

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